カリフォルニア・シャワー(XRCD-24bit Super Analog/紙ジャケット仕様)
若く才能のあるミュージシャンを積極的に起用し、いろいろな音楽を見事に自分のものにしてしまう渡辺貞夫は、この時期(70年代後半)、日本のフュージョンの牽引役でもあった。
「マイ・ディア・ライフ」よりもリラックスした演奏は、ジャズとポップスの垣根を取り払った、まさにフュージョンの名盤。
渡辺貞夫・アット・ピット・イン(紙ジャケット仕様)
うわべだけでナベサダを甘ったれたフュージョン系のアルト吹きだと思うと大火傷をする。ナベサダはビバップの流れを受け継いだ生粋の正統派ハードバッパーだ。今から33年前のクリスマスイブに新宿のピットインでライブ録音されたまるで奇跡のようなライブアルバムがその動かぬ証拠だ。まずはCeder Walton(p), Sam Jones(b), Billy Higgins(ds)という名プレーヤー達を揃えた面子のリズムセクションに驚く。うなり声を発しながら、気合いのこもったステック捌きを見せるヒギンス。ベースをブンブン言わせながら激しくグルーヴするジョーンズ。スピード感溢れるピアノを縦横無尽に弾きまくるウォルトン。全然手抜きのない本気汁をまき散らしながらのスウィングがハンパじゃない。ライブならではのドライヴ感にも圧倒される。この強者達に真正面から立ち向かい、互角いやそれ以上に渡り合うナベサダ。いやはや恐れ入った。ビバッパーとしての本性を剥きだしにして激しくブローする。まるでパーカーが乗り移ったような鬼気迫るプレイぶりに鳥肌が立ちっぱなし。お互いに刺激し合いながらも、演奏が進むに連れて見事な程の一体感を感じさせるカルテットのプレイぶりにノックアウト。この場に居合わせた幸運な観客達も大いに盛り上がる。当然だろうこんな凄い演奏を聴かされたらば。お馴染みのジャズスタンダーズからの4曲の選曲にも文句なく乗れる。
表の青筋立てたナベサダのモノクロ写真も良いが、裏面のギグ後の故ビリー・ヒギンズの自慢げなポートレイト写真も良い。本盤は紙ジャケ、DSDリマスターリング、ハイブリッド仕上げのゴールドデイスク。まるで観客席で聴いているような臨場感溢れる音質にも降参させられる。プレーヤー達の汗や唾が飛んできそうだ。世界に誇れる一級品のライブアルバムに違いない。