黒死館殺人事件 (河出文庫)
一度、原作を途中で投げた身なので、非常に有用だった。
原作黒死館殺人事件 (河出文庫)はドグラ・マグラ (上) (角川文庫)、新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)と共に、日本ミステリ界の三大奇書の一つと言われており、推理小説なのに推理小説を否定する体栽を取るアンチ・ミステリの源流の三つの内の一つと位置付けられている、日本のミステリ史において非常に重要な一冊である。
…で有るのだが、その一方で日本でも有数の難解な本としても有名である。原作を理解する為には膨大な知識量を要し、大筋を把握するだけでも一苦労である(其処が原作の『売り』ではあるのだが)。
その為、私は残念ながら途中で断念した事がある。
しかしながら、本書を読み内容をざっくりと理解して、イメージが出来るようにして再読した結果、読み通す事が出来た。その為、本書は非常に役に立った。
原作に挑戦する前の補助輪的な役割として有用だと思うので☆5を付けたいと思う。
黒死館殺人事件 (まんがで読破)
日本三大奇書の1冊。夢野久作の「ドグラ・マグラ」とならび、読みにくさでは他の追随を許さない傑作。しかし、黒死館の中に充満する暗黒世界の空気を感じる事が出来れば問題ありません。文庫本では内容に相応しくないのでこちらをお薦めします。
黒死館殺人事件 (現代教養文庫 886 小栗虫太郎傑作選 1)
この作品は雑誌 '新青年' に連載され,1935年5月異例にも新潮社から豪華本として発行された.著者序文によれば,"褒められるにも,誹られるにも,悉く最大級の用語を以ってせられた" そうだが,それは現在まで70年以上の間継続している.探偵小説であるかどうかは全く問題ではなく,明治以後この国で書かれた最も衒学的な,謎に満ち満ちた作品で,この方面の達人であった澁澤龍彦氏もどこまでが本当でどこからが捏造かを桃源社版の解説で研究したが,ウィチグス呪法典で挫折した程である.この早川版は旧字旧かなのままで,それが最大の長所である.この作品は解けない謎なのだから濫りに改めては謎がより見えなくなるのだ.私はこの傑作と60年来付き合っているが,今度初めて判った本当が一つあった.それはヴィオラの巨匠テルチスで,今井信子さんの本で初めて知った Lionel Tertis のことだった.この始末なので,うっかり嘘だと言えない恐ろしさがあるのだ.それと,生粋の神田っ子の歯切れ良い戦前の下町言葉.とにかく天下の奇書である.