カリフォルニア・シャワー(XRCD-24bit Super Analog/紙ジャケット仕様)
若く才能のあるミュージシャンを積極的に起用し、いろいろな音楽を見事に自分のものにしてしまう渡辺貞夫は、この時期(70年代後半)、日本のフュージョンの牽引役でもあった。
「マイ・ディア・ライフ」よりもリラックスした演奏は、ジャズとポップスの垣根を取り払った、まさにフュージョンの名盤。
渡辺貞夫・アット・ピット・イン(紙ジャケット仕様)
僕はこのとき新宿のピットインにいた。シダー・ウォルトン・トリオと渡辺貞夫がピットインで共演するというニュースを聞いたとき、「これは是非いくぞ!」とすんなり決まった。このときは昼と夜の2セットで僕は夜だったような気がするがはっきり覚えていない。確かなのは、オーネット・コールマンやデクスター・ゴードン、ハンク・モブレーなど大物と共演したビリー・ヒギンズ(ds)、キャノンボールとマイルスの「枯葉」で有名なサムシング・エルスのときのベーシスト、サム・ジョーンズ、アートブレイキーとJMのピアニストとしても活躍した名手のシダー・ウォルトンという凄いメンバーとわれらがナベサダが共演し、これこそジャズだというものすごい感動が体中を走ったことだけだ。僕が聴いたときもミキサーが入っていたので、「これがレコードになるんだ。もしかしたら僕の拍手や口笛も入っているかも知れない」という一体感が何よりもうれしかった。残念ながらこのアルバムは僕が聴いたセットと違うものと後で知ったが、当時の感動や臨場感はなんらそん色ない。日本のジャズメンが世界と渡り合った貴重なドキュメントであり、その現場に立ち会えたという満足感は何物にも変えがたい。ナベサダライブの白眉は彼の代表作になったのだ。