サン=サーンス: 交響曲第3番/動物の謝肉祭、他
この「作品集」シリーズの存在は最近知ったのだが、CD2枚にギッシリ、超一流演奏家の名演佳演を詰め込み(2枚とも最大収録時間の80分以内にギリギリ収めるために曲順も工夫して)、1500円という信じられない安価で提供している姿勢はまさに尊敬に値する。そもそもこのシリーズ自体が☆5つなんかでは全然足りないくらい高評価を与えるべきなのだが…なぜこの「サン=サーンス作品集」は☆1つ減にしたのか?これはあくまで私の同シリーズ内での相対評価だが…バレンボイム指揮の有名な「オルガン付き」「死の舞踏」「サムソンとデリラ」のキリッとした演奏、このアルバムで初めて聴いた曲「ピアノ協奏曲第2番」でのパスカル・ロジェの流麗なピアノなど、演奏はいずれも素晴らしく文句のつけようがない。ただ、彼の作品の一番の代表作「動物の謝肉祭」、なぜあえて室内楽版を収録した?もちろんアルゲリッチ、クレーメル、ツィンマーマン、マイスキー、グラフェナウアーという"これでもか"と言わんばかりの名手揃い、演奏自体に不満がある訳じゃないし、ある訳がない。でも、このシリーズってこれだけある意味"安全牌"的に、誰もが安心して聴ける超一流演奏家を集めてるはずなのに、なぜこの曲だけあえてオーソドックスな管弦楽版を外したのか。シリーズ全体を見てもすごく異質な感じを受ける。しかも、このアルバムはなぜかこんなに収録時間を余してるんだから(他はほぼ2枚で160分ギリギリだが、これは130分程度)、それならせめて「動物の謝肉祭」は管弦楽版と室内楽版ともに収録してくれれば、「ムソルグスキー作品集」の「展覧会の絵」のように比較して聴けて文句なしだったのに。ユニバーサルに管弦楽版のいい演奏がなかったのかな…アルバム全体としては十分誰にでも薦められるものだけど、そこんとこだけちょっとね。
とっておきのモーツァルト(4)集中力を高めるモーツァルト
この作品は、「とっておきのモーツアルト」の全10タイトルのうち、「CONCENTRATE」をテーマにした厳選された7曲が網羅されています。ワタシはモーツアルトは有名ですから当然ながら知っていました。でも1曲ずつ何に当てはまるのか判断が困難でした。この作品は分類すると「集中」するのに最適とのことで導いてくださった方々に感謝したいです。聞けば、なるほど空間が浄化されて、いろんな事をするのにも優雅に感じリラックスします。漫然と聞くよりもテーマを伝えてくださった事は良いことですね。・・
価格も安価ですし、これを弾みに他のテーマに準じた作品も揃えてみたくなります。
名序曲集
私も初心者です。少し前からオペラのアリア集を聴いていいなーと思い始め、でもオペラを全曲を通してはまだ聴く自信がないんです。でもこの序曲集は2枚組というボリュームとその演奏・指揮者の豪華さ、リーズナブルな価格を考えるとまったく損はないCDだと思います。楽しいですよ
バレンボイム/サイード 音楽と社会
クラシック音楽の本流を知る、良心的な2人の知識人の音楽を軸にした対話集。白血病と闘っているサイードがバレンボイムに話を合わせ、何か合意したいと思っている気持ちも感じられました。
小生の印象に残ったのは以下の点です。
・何かを理解するには必要な時間の長さがある。クラシックの曲は短く一言に要約できない。
・音は演奏された途端に減衰していく。沈黙に吸い込まれていく。音の流れは、この物理現象に対する抵抗という側面がある。
・音の流れは、演奏時には重さを持つ。その重さによって必要な時間が実は異なる。
フルトヴェングラーの振った曲は、その重さを判断してテンポが揺れている。
・曲の内容が薄いと、早いテンポでごまかすようなことになる。
・クレッシェンドしたフォルテッシモの後にピアニッシモがある場合でも、クレッシェンドを途中で鈍らせてはならない。これは勇気がいること。極端がカタルシスを作る。
・楽譜の情報は一部のみ。たとえば楽譜どおり全楽器が同時にクレッシェンドしたらトランペットとティンパニ以外は聞こえなくなる。弱い楽器から順にクレッシェンドして、音が聞こえるように演奏すべきだと思う。
・指揮者が命令して出る音は深くない。音を出しているのは演奏者。指揮者に言われるままの演奏者は最悪である。各人の思いが出て初めて深い音楽になる。
・ゲーテの「東西詞集」はアラブ文化を知った衝撃を表したもの。サイードとバレムボイムはワーグナーゆかりの地で、アラブやイスラエルのような紛争地帯の演奏者を集めたオーケストラ活動を行った。最初は反目しあっていたが、曲を合わせた経験が彼らを変えた。音楽の経験には神秘的なところがある。
・ドイツの音楽は、ドイツ人だけがわかるわけではない。日本人でさえ、良い演奏者が大勢いる。各国の文化が違うのは悪いことではないが、それが他の文化より優れていると思うのは大きな間違い(ナショナリズム)。
・反目してお互いを無視しあっていてもしょうがない。対話が解決につながる。
・ワーグナーは人としては最低だったが、音楽は音響含めて革新的だった。ホロコーストなどでトラウマになっている方々は尊重しなければならないが、イスラエルでも上演されていい。(実際、アンコールで上演して、批判の嵐も浴びた)
・「物議をかもす人」というのは、知識人にとって褒め言葉である。2人ともこれを誇りに思っている。
・音はその場限りで消えていく。音楽は人生を勉強するのに最適のものだ。また、同時に人生からの逃避にも最適だというのがパラドックスだ。
いい友達だなと思います。2人とも筋の通った、時代の旅人でした。(バレンボイムはまだ存命なので、彼の正統な音楽はまだこの世で聴けます)
マスネ:歌劇《マノン》 [DVD]
2010年のアンナネトレプコ来日公演はマノンですね。これでしっかり予習して、当日は字幕を見ずに、彼女の演技と歌を存分に堪能したいと思います。
まるでブロードウェーのミュージカルを見ているかのような華やかなステージ。音楽はダニエル・バレンボエム指揮です。
最終幕のアンナ・ネトレプコの演技の細やかさが絶妙。
彼女の演技はクローズアップで見てこそ、その素晴らしさが分かります。