ゴッド・ブレス・アメリカ
アルバムの目的そのものは、同時多発テロの救済にあたった方々を助ける基金です。とはいえ、同時に、愛国心宣揚、そして国威宣揚を目的とした“国歌”と“軍歌”の再発見をも目的としていることも事実でしょう。各トラックの演奏がすばらしいがゆえにこそ、本CDリリース後の歴史を思うと寒気がします。明日は我が身です。
セリーヌ・ディオンが、フランス系カナダ人でありながら1を歌うのは、やはり彼女がハリウッドの超大作映画『タイタニック』の主題歌を歌ったことが示すように、自身の利害関係がアメリカの巨大資本中心のグローバリゼーションにしっかりと組み込まれているせいだと思われます。著作権の表記を参照すると、最初は、1938、1939年、次は、1965、1966年となっています。すなわち、1は、恐慌の終息、太平洋戦争(1941~45年)前夜やベトナム戦争(1960~75年)と切り離せしては聴けない歌のようです。2は、演奏そのものはすばらしいライヴ・テイク。3、6、8、15は英雄主義、12、13は救済を示唆しているので、やはりなんらかの戦争の勝利に対する祈願につながってくるでしょう。6について言うと、1970年という時代背景から言って、「明日にかける橋となるために、ベトナムに兵士として行ってこい」、もしくは「ベトナムでの犠牲者は明日にかける橋なんだ、犬死ではない」という暗示なしには成立しない歌とされています。13、14、15も、それぞれ、ベトナム戦争期、つまり1963年、1965年、1972年リリース。9、10、11、14は、愛国心がテーマ。9は、太平洋戦争勝利の年、つまり1945年リリース。
愛国心宣揚、そして国威宣揚の組み立てに楔を打ち込んでいるとしたら、それは、5でしょう。というのも、「風に吹かれて」は、アメリカ社会における差別主義を批判したり、武器廃絶を願ったり、指導者主導で戦争を起こすことを批判したりしている歌ですから。