国連安保理と日本 (中公新書ラクレ)
著者は安保理はどのようなメカニズムで動き、何を決定しているのかという問題意識で鋭い分析を行い、日本は安保理とどうかかわり、何を目指していくべきなのかという提言を、4年間に及ぶ読売新聞特派員としての取材経験にもとずいて述べている。
その提言の中でも、重要なものは、準常任理事国という、安保理改革に積極的な国連加盟国グループが提案している可能性を模索してほしいというものである。
国連特派員のみが取材可能な、大使達による安保理の舞台裏の様々な駆け引きの様子が実に生き生きと描かれている。白川氏とはニューヨークの国連本部で何度かお話させて頂いたこともあるが、もし続編を考えていらっしゃるならば、準常任理事国案に関してのより詳しい解説、ならびに安保理常任理事国の核兵器保持の問題について分析して頂きたい。
人道的介入―正義の武力行使はあるか (岩波新書)
一昨年あたりからの新書ブームで今までだったら新書としては出版されないような内容の本がずいぶん出ているような気がする。もちろんそれ自体が悪いこととも限らないし、実際『孤独について』(中島義道著・文春新書)であるとか『もてない男』(小谷野敦著・ちくま新書)であるとか、10年前なら新書で出ることはまずありえないと思われる興味深い(?)書物が出てきたことは歓迎したい。
ところで、本書はいかにも昔ながらの岩波新書的な内容。とっつきにくい困難な問題な問題について、平明な語り口で、事例をまとめ問題点を整理し、考察を加え、一応の結論を導く、という手際は実に鮮やかであり、新書とはこういうものであったよなぁ、と思い出させてくれる。おまけに後書きに記された日付がアフガン空爆前というのも感慨深い。
個人的には小泉首相に読んでもらって感想を聞いてみたい。「感動した」と言ってくれたら嬉しかったりして。