マタギ 矛盾なき労働と食文化
現代のマタギの生活・文化が分かりやすく過不足なくまとまっており、写真も多くて読み応えがありました。
特にマタギの猟の部分では、彼らの卓越した能力が活き活きと描写されており大変興味深いものです。
マタギについて興味をお持ちの方にはお勧めです。
邂逅の森 (文春文庫)
東北の狩猟で生計を立てる「マタギ」の物語。作者ならではの東北の雄大な自然を満喫できます。東北の自然は本当に神がかっていて、自然の力強さを我々に見せてくれます。秋田、山形という設定も地元の私には強く訴えかけてきます。
本作の凄さは自然賛歌だけの物語ではなく、一人のマタギの人生を描ききっているところにあるのです。その人生もすざましく濃いものであります。富治の辿ってきた人生、出会った人々、恋愛、全てが読者の心に響きます。本当に良い読書体験でありました。
人間を自然の一部分として捕らえた時に、自然と対峙しなければなりません。その経験は現在では殆ど体験することが出来ません。本書に触れることでその一端を垣間見ることが出来ます。
たぶらかし
ほんとうにありそうな「たぶらかし」業、それは役者の派遣。
このままおもしろい連続ドラマになりそう。
着想がおもしろく、文章もきちんとしている。
著者は二度の最終候補を経て、小説すばる新人賞を受賞した。
あきらめないで書き続けた努力、そしてガッツというか執念が、作品に溢れている。
主人公は冬堂マキ、食えないが知る人ぞ知る役者、
「伝説の女スナイパー、サグラダファミリア、通称赤マムシ三平太」。
5年前、両親の海外移住でパラサイト不可となったマキ。
藁をもつかむ感じでヤバイ会社に就職、そこは1日で退社するも、
同じビルに役者募集の張り紙を見つけ、飛び込んだ。
即採用された会社の業務内容は、役者の派遣。
自殺死をとりつくろう遺体、
新妻の親戚付き合い代行、
セレブな母親代行。
世間をたぶらかそうとする、ひとクセもふたクセもある依頼者たち。
マキは、むちゃぶりされた役を見事に演じることで、
彼らの人生と深く関わることになる。
この作品だと、姫野カオルコと作風が被る気がするが、
凄味のあるパワフルな書き手だと思う。
今後に期待。