日本沈没 上 小学館文庫 こ 11-1
1973年の作品で時代背景が現在と大きく異なっているにもかかわらず、それをほとんど感じさせなかった。日本国とは何か、日本人とは何か、あるいは愛国心について深く考えさせられる内容だった。この作品完成後、バブル、失われた15年を経て、最近『国家の品格』とか『武士道』が注目され、日中、日韓、日露問題がクローズアップされていることが、そこに繋がってきたのではないかと思う。
SFの面白さというよりは、今の時代について思いを巡らせる機会を得たという点で読んで良かったと感じた。
果しなき流れの果に (ハルキ文庫)
何度も読んでしまう。単純に面白い。
1965年に書かれたものであるが、まるで一片の古さも感じない。
描写がすばらしく、風景、人や物の造作、見たこともないはずの「モノ」であるのに、何故か脳裏に浮かぶ。
言いすぎかもしれないが、最終章でさえもぼんやりとイメージが浮かぶ。
そして、何故か感動し涙腺が緩む。
人間は儚く、ちっぽけな存在だが、一人一人の愛情・人生は時空を超えたところにあり、悲しくも素晴らしいと思える。
日本沈没 下 小学館文庫 こ 11-2
東海地震、東南海地震、南海地震同時発生が本当に起きてしまったら…というシミュレーションがこの『下』で再現されていることを改めて知りました。最近になって、スマトラ沖地震と瓜二つの大規模な地震が日本でも起こるという事実を知ってからは、これは全くの科学空想ではないな、と考えています。しかし、圧倒的だったのは『上』の東京大震災のシーン。あそこまで書き込みがすごいなんて…。
東海地震、東南海地震、南海地震同時発生のシーンはかわぐちかいじの「太陽の黙示録」第1巻でも描かれていますので、そちらの作品もご参照ください。
【東宝特撮Blu-rayセレクション】 日本沈没
まさに平成に生きる我々が明日直面するやも知れない出来事を三時間で濃縮した超大作。平成版では『何だこりゃ女のケツばかり追わず命をかけてやらんかい』と怒りさえ覚えた草なぎが演じる小野寺と違い(個人的見解です。草なぎファンの方スミマセン)、クールだが日本人の行く末に怒りにも似た不安や望みやらごちゃ混ぜの感情でラストに向かいボルテージを上げていく藤岡弘の演技力、復帰初の作品で魂まで田所博士を怪演した小林桂樹、『内閣総理大臣としてお願いします。皇居を開けて避難民を中へ入れてください。』と国民、いや日本人の行く末を真剣に考えた山本総理を演じる丹波哲郎など、戦争を経験した人々だからこそ演じられる独特の『真実味あるパニック映画』であり『人間ドラマ』だと思います。また、この映画の凄い所は、当時の世界の学会で相手にされなかった『マントル対流による地震の可能性と危険』を主張した東大の竹内均教授を映画に出演させ、しかもその主張を、今日では正しく当たり前の事でありますが、正々堂々と描ききった事です。そういう意味で言えば、単にSF映画では片付けられない、日本人の高い科学的見地と想像力が創りあげた作品と言えます。ラストのシーンでは人間の『儚き運命』を感じるでしょう。観るべし!
日本沈没 [DVD]
うる覚えで恐縮ですが。
コミックス『太陽の黙示録』の雰囲気というか、アイディアのスタート地点というかがこの『日本沈没』のそれと一緒に見える。ボクが『太陽の黙示録』を初めて読んだとき、「だいぶ前にこういう内容の映画観たな」と思った。題材が似ていることは特に気にしないが、この『太陽の黙示録』の帯に、某超有名映画人による「日本ではこういう映画は作れない」という趣旨のコメントが書かれていて、ボクは苛立ちを覚えた。映画として『日本沈没』という前例がありながら、完全に無視されていることに他ならないからだ。(付け加えるなら、「こういう映画をを作れない」ようにしてしまったお前ら映画人を恨む、とも思った)
その後、『日本映画半世紀の歴史』みたいな本を見つけるたびに一応目を通すが、『日本沈没』の名は出てきたことがないと思う。(ちなみに『復活の日』は一回観た(笑))
この映画はかなり危険で、難しい、鬼門というべき内容のテーマを取り扱っていると思う。最近樋口監督によるリメイク版も出たが、それでもこの旧作との比較みたいな批評は公には少なく、こっちにはあまり光が当たらなかった気がする。
だからボクは忘れられた名作と言いたい。