後期ショパン作品集
音楽のレビューは原則として書かないことにしているのだが、禁を犯して書くことにしたのは、ここに収められた演奏が史上稀に見る名演であるにもかかわらず、きわめて誤解されやすい性格をもっていると思うからである。
ショパンの音楽を典雅なサロン音楽と勘違いしている人が世の中にはゴマンといて、そういう輩がこのCDを聴いたら、(もしその人に聴く耳があれば、という条件付きだが)きっとこの「暗さ」にがっかりとすることだろう。しかしショパンには、モーツァルトの哀しみとは違った心の闇がある。後期作品を並べたこの作品集は、ショパンの深淵にあえて光を入れず、光なき奈落を覗き込んだような演奏である。私の好きなソナタ3番は筋肉質のポリーニと対照的かつ双璧をなす名演で、私は最初のいくつかの音を聴いて、びっくりした。そのあとの曲の選択・配列もよく練られている。チェロのゴムジャコフもよくがんばった。なお、同一コンセプトによるこの二人の日本公演は、恰も演劇のような舞台であったという。
こうした外連(ケレン)は私の好むところでないのだが、このCDは別。これはショパン演奏史上特筆すべき名演奏であり、一編の作品としても名作であると思う。
モーツァルト生誕250年記念BOX モーツァルト:ピアノソナタ全集
良い演奏です。演奏、音質(デジタル録音)、値から判断すると、モーツァルトのピアノソナタ全集ではこれが一番おすすめです。
幻想曲 ハ短調 K.475を、第14番ハ短調ソナタの冒頭に配置しているのは、モーツァルトの楽譜に忠実で良く、続く14番ソナタの響きの印象も変えてしまうほどでした。
ソナタではないですが、特に良かったのが、併録しているロンド イ短調 K.511。
ショパンの曲と言われても勘違いしそうな、半音階的な動きや装飾音が多い、陰影に富んだ曲です。
ソナタ形式提示部の繰り返し指示を守っているだけでなく、変奏曲形式の曲についても、全ての変奏を繰り返しているのは、くどいと感じる向きもあるかもしれません。
例えば第11番第一楽章の変奏曲は、演奏時間を15分くらいかけています。
皆さん書いている通り、収納がペラペラの不織袋なのは残念です。
輸入盤BOXものでよくある、紙ジャケットに入って裏側に曲目が書かれている形だと、まだ使いやすかったのですが、そのような形ですらありません。いちいち解説を見ないと、どの曲かわからないのは不便です。
ただ、あえてバラ売り盤で購入するほどではありません。