エレンディラ (ちくま文庫)
いかにもガルシア=マルケスらしい「物語の語り」に満ちている短編集。
日本に住む自分からは想像できないようなこと(天使を捕まえたり、海からバラのにおいが漂ってきたり)が、まるで日常のように起きる。
ラテンアメリカとはいったいどんなところなのだろうと、否が応にも想像力が踊る。
訳者があとがきに書いていたことだが、こういったことは、本当にラテンアメリカでは起こる、だから西欧のように手練手管を使う必要はないのだという、地元の人の話を読んで、訳者と同じくらいびっくりしてしまった。
魔術的リアリズムと呼ばれる彼の特徴はじつは手法ではなく、日常のリアルであるらしい。
それにしても、マルケスは娼婦に特別な思いを抱いているようである。
「エレンディラ」のベッドのシーツをしぼるシーンなどは、そのまま「百年の孤独」にあった一場面でもある。
物語が別の物語とつながって、彼の作品はすべてひっくるめて、ひとつの大きな物語になっている。
だから、長編の方がいいとか、短編の方がいいとかの評価はつけがたい。
やはり、表題「エレンディラ」が傑作。
とても印象的で、映像として心に焼きつくラストである。
For Love Or Country: Arturo Sandoval Story [DVD] [Import]
キューバの伝説のトランペット奏者Arturo Sandoval(アルトゥーロ・サンドバル)の“自伝”。
基本的に反革命の映画。 特に80年代以降CUBAを離れていった人々の心境の変化をよく描き出していました。 <アルトゥーロの奥さん・マリア・エレーラ>を通じて我々はその気持ちを汲み取ることができます。「私が外国人を招いたり、主人が好きな音楽を演奏しただけで壊れるような革命ですか? その程度ならやめたら?」というセリフが印象に残ります。
実際のアルトゥーロ・サンドバルはCUBAでカストロ兄弟の次に高級車を乗り回して、豪奢な生活をしていたそうです。 したがって、アンディ・ガルシア演じるところの人物とはかなり違うのだということを実際にアルトゥーロを知る人物から聞きました。 それがトランペット奏者としての彼の価値を貶めるものではありませんが。 どうしても映画には脚色が付き物ですし、ドラマティックにしないと観客を呼べませんからね。 実在の人物と切り離して見なければならないけれども、非常に興味深い作品です。
予告された殺人の記録 (新潮文庫)
ガルシア=マルケスといえばノーベル文学賞をとった「百年の孤独」が有名ですが、私は全くダメだったので(あまりに長すぎるし、ちょっと幻想モノとしても出来はイマイチだと思うのだが...)それ以前に読んでいた「エレンディラ」の様な幻想モノを期待して読んでみたのですが、全く違うジャンルだけれどもこれが良かった!
閉鎖的な村で起こった(というか起きる事が分かっている)殺人事件を関係者の過去やしがらみ、感情などを細かく描写しながら何故起こってしまったのか、あるいは止められなかったのか、を問いかけるリアリズムと言って良い様な文章です。
解説でも触れられているのですが本当に起こった事件を基にしているらしいです。
ザラリとした手触りを思わせる文章で描写される、起きてしまう、避けられなかった殺人事件をめぐる物語。
ある意味グロい悪夢のような、暑い気候の、蜃気楼を感じさせるような、そんな物語です。
短いけれどぐっときます。
Cronica de una muerte anunciada (Vintage Espanol)
「何故サンチャゴナサールは殺されたのか?」それがこの作品の主題である。
忘れ去られた村で、30年前に起こった殺人は、偶然と必然が組み重なって起ったものである。被害者の友人であり、加害者のいとこである主人公が、その謎を解こうとすればするほど、理解不能になっていく。
彼が殺された理由は「花嫁の貞節を奪った」からだが、誰もそれを信じず、彼を殺した理由は「妹(花嫁)の名誉を守る為」だったが、本気で殺そうとは思っておらず、だから周りに吹聴して実行が中断される事を願っていたが、誰もそれを止められなかった。
よそ者であった被害者と、同じくよそ者であった花婿、この二人がこの閉鎖された村で起った事件の被害者ともいえる。
彼らが、「神の前でも無罪」と言ったのは、自己の意思に反した犯罪は神の意志としてしか考えられないからであろう。それほど多くの偶然が重なり、この「予告された」殺人が決行されてしまった。
不思議な小説である。読めば読むほど、「殺人が起きた理由」から遠ざかっていく。こうした理論的な手法をとりながら、この様な印象を与え迷宮に誘うような印象を与える作者の技量はさすがである。
コレラの時代の愛 [DVD]
こ、こんな男があなたの恋人だったらどうする?
「君のために純潔を守り通した」といいながら、
622人の女と「習慣」で寝て日記までつけてるの。
Aちゃんと寝た、Bちゃんと寝たと、律義に記録を
残し、他の女と寝るのは「僕の習慣だから」と・・。
フロレンティーノが、次々に女性と関係を持つので、
彼の考える純潔は「男の詭弁」としか思えなかった。
コレラの時代の純愛というよりストーカーみたいで、
主人公のハビエル・バルデムがちょっとキモかった。
でも、「ママ・グランテの葬儀」の表紙みたいな
色調や鳥の絵が出てくるのはステキと思いました。
私には、良く分からない純愛ものだった・・。