殺ったのはおまえだ―修羅となりし者たち、宿命の9事件 (新潮文庫)
平成12年から13年頃の事件が9件、まだ記憶も新しい大阪「池田小」児童殺傷事件、恵庭「社内恋愛」絞殺事件、池袋「通り魔」連続殺傷事件、神戸「女子中学生」手錠放置事件その他の犯人、生い立ちから境遇、またその周りの状況、環境を詳細に追っている。ニュースは勿論のこと、週刊誌でもここまでは書いていない内容に驚き、またその犯人の内側や家庭内は推理小説や恐怖小説よりずっと怖い。そもそもこういう犯罪者になる多くはやはり元から家庭環境が壊れている。また貧困であったり、いじめられ、引きこもりであったり、或いは異常な可愛がりや過保護、甘やかし、家庭内のこういう現象が犯罪者を作ってしまうケースが多そう。この執筆者達の文章はうまく、ドキュメンタリーとして良く描かれている。
テイルズ オブ デスティニー リオン・マグナス (1/10スケールPVC塗装済み完成品)
手にした感想はというと全然いい、です。
いのまた氏のあの繊細なイラストをちゃんと立体化できるのか?っていう不安を抱きつつ(発売前に公開された試作品を見ても)、途中発売延期にもなりましたが無事に発売されて色の塗り斑もあんまりなく(物によるかと思いますが)この出来かなり満足です。
一番不安だったリオンの顔の造形(特にいのまた氏のイラストの特徴である目の表現)とか髪の質感、ポージングは(マントに)動きがあって個人的にはかなり好きです。
そして、シャルティエの鋭さっていうのか繊細さっていうのか、シャルティエが綺麗です。リオンに装備させてもしっくりとリオンの手になじみます。
リオンだけじゃなくスタン、ルーティ等他のソーディアンマスター達も出して欲しいなと思いました。
決壊 上巻
凄い。
ドストエフスキー没して百年余。ネットや映像等のメディア内では、誰もがラスコーリニコフになりうると同時に、誰もがラスコーリニコフを裁く判事となりうるし、イヴァン・カラマーゾフに殺人を示唆されたというスメルジャコフになりうる。そしてこの小説においては、スメルジャコフ的遺伝子をもち、スメルジャコフ的成育環境にあった者たちの復讐とも言うべき事態が起こる。
この小説の凄さは、ドストエフスキー的な対話を軸に、ネットやメディアに溢れる言説を本物そっくりに活写し、かつ登場人物ひとりひとりの血を、体温を、リアルに濃密に伝えてくることだ。
残虐な連続殺人に対して、メディアの新情報を今か今かと待ち、残虐な事実を知るたびに、やり場のない怒りを紋切型の喋りでしか表現できないもどかしさに腹立つ、という状況は、まるで現実そのもので、犯人の少年や家族の言葉は雑誌やテレビというメディアを通して、実在の事件そのものだ。そこに生身の少年がリアルに描かれることで、コメンテーターや教育者の正義の言説の空疎さが浮き彫りになってしまう。
殊に沢野一家の悲劇は、前半のリアルな一家団欒の描写を経て、痛ましく胸に迫り、はからずも平成のスタヴローギンとなってしまう沢野崇の造形は真に魅力的だ。
かなり前に同じ作者の「高瀬川」のレビューで「リアルな細部はおもしろいけど、急にエラソーな作者がカオ出すと興ざめ」と書いたけれど、平野啓一郎がここまでの構築力を持つに至るとは……不明を恥じる。ドストエフスキー以来のドストエフスキー的興奮で、寝食忘れて読んでしまった。