新版 古寺巡礼京都〈21〉金閣寺
金閣寺を知らない人は少ないでしょうし、京都を訪れる際、まず見たい場所に挙げられるほどの有名寺院です。本書はその金閣寺の魅力の全てを写真と文章で綴られたものです。
金色に輝く楼閣の美しさは多くの写真家によって発表されていますが、本書はその内側から撮った珍しい光景も収められています。
一層から鏡湖池を眺める写真はまさしく一幅の絵とも言うべきものです。中央に宝冠釈迦如来像が収められ、左には足利義満像が安置されています。二層には美しい岩屋観音像と四天王像が安置されており、三層は、シンプルな禅宗様の仏殿風になっており大切な仏舎利が置かれています。それぞれの写真を眺めているだけで気持ちが穏やかになるような荘厳さに包まれていました。
空中写真として撮られた池泉回遊式庭園も他では見られない気品が感じられる佇まいです。流石に国の特別史跡、特別名勝に指定されているだけに見事な光景でした。
ご住職の有馬頼底氏、碩学梅原猛氏によって書かれた金閣寺の歴史やその意味合いを書かれた文は含蓄に富んだものでした。
足利義満の権勢を誇る北山文化の粋とも言うべき鹿苑寺の全てが収められていますので、詳しい観光ガイドブックとしても利用できますし、普段鑑賞できない箇所の確認にも使用できるでしょう。
特に茶室夕佳亭の佇まいは、茶室建築の中でも秀でており、堪能できるものでした。他に伊藤若冲の絵画や、立派な墨蹟も収録されています。
三島由紀夫の『金閣寺』や水上勉の『金閣炎上』に書かれている有名な放火事件は残念ですが、今ここに素晴らしい佇まいで再現されているのを見るにつけ、日本の文化財保護の大切さも感じました。