陽のあたる坂道 [DVD]
私のかすかな記憶にうちのお手伝いのキミちゃんと週末に行った映画館での裕次郎がある。
それまでキミちゃんのお気に入りは東映の時代劇の中村錦乃助で
森の石松だったり若衆だったりさすらいの剣士だったりして週末のスクリーンで輝いていた。
キミちゃんがある日私をいつもと違う映画館に連れて行ってくれた。
始めてみた現代劇で若くてキラキラしてイタズラっぽい笑い顔の青年に館内から凄まじい嬌声が飛び交っていた。
何か見てはいけないものを見たような後ろめたさは東映時代劇にはないクールな都会青年は
大人の言うところの不良だと感じたからなのだろう。
今思うと裕次郎の絶頂期の映画はキミちゃんとほとんど見ているかも知れない。
キミちゃんも雇い主である我が親から裕次郎を禁止され、口止めの板チョコ(キミちゃんには痛い出費だったと思う)とともに
私と安全な東映映画に行く振りをして日活を見に行くほど大ファンだったんだろうと思う。
ゆったりとした映画の中の時の流れ、丁寧な言葉遣い、懐かしい住宅街の景色、踏み荒らす人も少ない雪山の白、シェパード・・・
総てが懐かしい子供時代に浸れる私のタイムマシンがこの映画である。
「錦之助見たって言わなきゃ駄目だよ」
チョコレートとともに繰り返される毎回のキミちゃんの台詞も甦ってくる・・・・
青い山脈 前・後篇 [DVD]
今の目で見ると(今の目で見ちゃいけない映画なのかもしれませんが・・・)、他愛無い話を大きな騒ぎにして、民主主義や自由恋愛といったものを説いているような印象で、あまり面白くなかったです。登場人物たちのセリフも何か、板についていないというか、言わされているような感じがしてしまう。どちらかというと理事長(小津の晩春で’不潔だわ’と言われていた叔父さん)やら体育教師?(黒澤の野良犬に出てたポマードのあんちゃん)の悪玉や、高堂老人の理事や、芸者梅太郎なんかに愛嬌があったりして、民主主義派のキャラクターはどうも魅力薄。夏目漱石の「坊ちゃん」みたいな真っ直ぐな正義で悪玉をやっつける痛快さはないです。理事会で小ずるい策を弄したりするのも、すっきりしない。第一、校医の沼田先生は、原節子演じる島崎先生の美貌に惹かれて民主主義派についているように思えてしまうのもマイナス。なんか最後のプロポーズも不意打ちみたいでフェアじゃないよなあ。原節子さんは、凄く綺麗!!(なので星3つです)。
陽のあたる坂道 (新潮文庫 い 1-18)
青森と言ってもある作家とは
こうも、違うものかと云うほど
前向きな温かい作家ですよね。
明るくすこやかな 人の温かさや優しさ、
誰しも大小あるだろう劣等感への扱い方。
活き活きと描かれたものが少ない現代だからこそ
余計に心地良く感じます。
信次を倉本たか子が愛することも自然で
たか子と信次に語らせていることが
伝えたいことなんだろうなと思います。
こうした学生を描く雰囲気は、
曽野綾子女史の28才から35才当時の
いくつかの小説ともテイストが似ていて
お気に入りです。
青い山脈 (新潮文庫)
他のレビューの評価が良かったのでここで三ツ星を付けてしまうのはちょっと抵抗があるのですが、読んでみてそこまで共感できませんでした。新聞連載当時から絶大な支持を受け、刊行されるやいなや大ベストセラーとなった本書。内容はこの時期特有の旧体制の打破という典型的なものです。
一人の少女の恋愛をめぐって学校が二分し恋愛を認めるべきか否かと、意見を戦わせるという、少々リベラルな筋書き。たぶん著者は「青年達の自由な恋愛を認め、封建的な考え方は打破すべきだ!」とこの小説を通して言いたかったんでしょうね。読んでいて著者の熱意が伝わってきます。筋書きそのものも確かに他のレビューアーの方がおっしゃる通り、若者らしい情感や描写に溢れ、読んでいて気持ちよくはなります。特に問題となる男女の関係は非常に洗練されており、ボート乗り場で不良と戦う所は思わずハラハラさせられてしまいました。なんとかなってホッと胸を撫で下ろしたり。ただの青春小説として読めば何ら抵抗なく本当に気分よく読めるでしょう。これは本当にそう思います。
しかし、先述したように著者の主張が全面に押し出されていて物語が恣意的過ぎるきらいがあります。実際に意見を戦わせる場面では一応山場は用意されるのですが、その作り方がなんというか素直に共感できない。いかにも「作ったな」という感じがしてしまいます。その切り抜け方もあっさりしすぎている。面白くなってきたと思ったら、すぐに引っ込んでしまう。最後の和解のシーンも取って付けたような話で不満足でした。登場人物も味方側(自由恋愛賛成派)はいかにも啓蒙された進歩的な考え方を持つ人々というかんじで、反対側は(態度を変えるまでは)陰険で自分勝手、旧弊に惑わされ続ける愚鈍な人物と、描き分けがはっきりしすぎています。言い過ぎかもしれませんが、なにかパンフレットじみているような気さえしました。しかも討論のシーンではなんら論理的なことはお互いしゃべってはいないのに、投票したらいつのまにか味方が勝っている、変だと思います。
感想はタイトルの通りです。正直に言って素直に薦める気にはなりません。
陽のあたる坂道 (角川文庫)
青森と言ってもある作家とは
こうも、違うものかと云うほど
前向きな温かい作家ですよね。
明るくすこやかな 人の温かさや優しさ、
誰しも大小あるだろう劣等感への扱い方。
活き活きと描かれたものが少ない現代だからこそ
余計に心地良く感じます。
信次を倉本たか子が愛することも自然で
たか子と信次に語らせていることが
伝えたいことなんだろうなと思います。
こうした学生を描く雰囲気は、
曽野綾子女史の28才から35才当時の
いくつかの小説ともテイストが似ていて
お気に入りです。