現代の金融政策―理論と実際
著者の真面目な性格が隅々に感じられる金融政策の優良なテキスト。
引用が原語のままという点は門外漢にとって難関だが、そんなことは些細な問題で全体的にわかりやすい。
それは著者の力量と対象が普段当たり前のように使っているお札にまつわる話だからではないだろうか。
また、まさか自分が日銀総裁になるとは思っていなかったときに執筆されているので、今後の日銀の舵取りと対比しながら見ていくことができる稀有な例であり興味深い。
序章を読んでいるうちから心がワクワク浮き立つような感じで、本文に入ったら本当に教え上手の教授の授業を受けているようで飽きることが無い。
こんなにわかりやすい専門書は初めてで、最後まで本当に興味深く読めた。
著者のぼそぼそと喋る語り口や8時20分の眉毛は中央銀行のリーダーとして大丈夫かと不安を持たせかねないが、本書を読む限り「人間は見た目じゃない」の見本として活躍されることと思う。
出版にあたって家族に感謝するケースは多いが、両親にも感謝の気持ちを表わしている。その一言から、両親の愛に守られた素晴らしい家庭に育ったことがわかる。
何人もの日銀総裁候補者がことごとく否定されていくなかで、著者に対する悪口が聞かれなかったのは育ちのよさによるものだろうか。大変うらやましく思った。
ゼロ金利との闘い―日銀の金融政策を総括する
流動性の罠(政策金利がゼロに近づくことで金融緩和の効果が損なわれる事)に陥った時の金融政策について、中央銀行が選択できる金融政策として具体的に3つの政策を挙げている。その中で、筆者自身は時間軸の効果が最も有用であることの理由を説明している。小生は意見を同じくするものではないが、日銀が行ってきた流動性の罠との戦いを整理されて説明されている。専門家から学生まで全ての人がこれらの理論を考える上で、最良の書と思われる。
日銀を知れば経済がわかる (平凡社新書 464)
テレビでも活躍する著者だが、テレビでのニュース解説同様、本書でも非常にわかりやすく日銀の役割を解説してくれている。
貨幣や金利の役割などを中心にこれまでの日本銀行が行ってきた金融政策の解説や歴史的な役割の変遷などが書かれており、金融システムの
基礎的な内容を理解するのに非常に有効だと思われる。
本書は金融に関して幅広く言及しているので、当然これ一冊で経済や金融がわかるわけではないが、本書を読んでから金融システムの入門書を
読めば、比較的抵抗なく読みすすめられるのではないだろうか。
もちろん、日本銀行、金融、貨幣、金利って何?という人も、金融危機後の社会の動きの意味を知りたいという人にもお勧めできる良書である。