無知との遭遇 (小学館101新書)
この本に学術書と同じレベルの評価を与えていいのかどうか少し悩みました。
これはジョークを使いながら、日本の現状を批判的に、ユーモラスに読み解くものです。
あまり厚い本ではないのでサラッと読めます。
もう少し書き込んで欲しかったのも本音です。
しかしながら、落合氏の憂国の想いは、確かに今日の日本人に当てはまるようにも思えます。
序盤で割と辛辣な日本論を展開する氏ですが、問題意識は日本の若者への希望の裏返しと感じました。
一つには、やはり、日本人としての自信を持って欲しいのだろうと思います。
そのためにまず、コミュニケーション能力を付ける必要があるのでしょう。
そのコミュニケーションの手段の一つとして「ジョーク」を挙げております。
ジョークはニヒリズムとギリギリ紙一重のところで生まれるものでしょう。
「今」が辛くとも、ジョークで乗り切って欲しいという気持ちが込められていると解釈しました。
もう一つは、教養を付けて欲しいのだろうと思います。
時折、古典文学、哲学、詩の表現などについて触れていますが、
若者にとって何よりも教養が大事だと訴えているように思われました。
確かにジョークにはユーモアが必要ですし、そのユーモアも教養で磨かれるものだと思います。
モラルを追求が叫ばれている今日の世界にあって、こういう固くない文化論も面白いですね。
小説サブプライム 世界を破滅させた男たち
久しぶりに著者の作品を読みました。サブプライムを題材とした小説(フィクション)となっていますが、1990年代からリーマンショック付近までを実際にあった出来事と架空の人物達を融合させて物語が展開しています。さすが著者は、アメリカの醍醐味というか肌感覚を非常によく分かっていて、臨場感のある表現をしています。長年アメリカにいた私もニューヨークが懐かしく感じる程です。ただ、サブプライムの渦中にいる人達がメインのキャラクターでなかったのが若干残念でした。その辺(まさにサブプライムを生み出した張本人たち)は、マイケル・ルイスのビッグ・ショートの方がおもしろおかしく、かつ実情を捉えていたかもしれません。相変わらず、著者のアメリカに対する熱い想いは伝わってきました。読み応えのある、熱い経済小説と呼べる一冊です。
モサド、その真実 世界最強のイスラエル諜報機関 (集英社文庫)
世紀の虐殺者アイヒマン誘拐からイラク原子炉急襲など、不可能を可能にした鉄の意志の男たち! その苦難と栄光に肉薄する落合信彦衝撃のレポート。 極東には閉じこもっていられない今日、世界の火薬庫といわれる混迷の中東を知るための必読の書。
「モサドに関してもっとも興味があったのはその活動内容よりもそれを動かす人間達であった。だから必然的にこのレポートはインタビューが中心となった。へたな解説などつけるよりは、実際にモサドという機構の中で生きてきた人間達のナマの声を聞く事がモサドを知る上で最良の方法と考えたからである。」(著者のコメント)
著者がイスラエルで直接取材したデータをもとに書きあげた世界最強の情報機関の本。この本の優れた点は、たんにモサドの機構や歴史を語るだけでなく。モサドの強さの秘訣を探るためモサド創設者であるイサ・ハレルや伝説的スパイ、ウォルフガング・ロッツほか多くの関係者にインタビューを行っている点である。