悪人 (特典DVD付2枚組) [Blu-ray]
李監督と原作者の吉田さんが共同で脚本を練っただけあって、ほとんど原作通りの場面が何箇所もあり、原作のファンとして、非常に興味深く見ることができました。とにかく李監督のこだわりがハンパないらしくて、例えばロケーションひとつにしても、原作に出てくる実際の場所やお店じゃなきゃダメというように、原作の空気感をリアルに再現するための相当の努力が払われたようです。
純粋に1本の映画として考えてみても、この映画が素晴らしいことに違いはないですが、反面、ちょっと解釈のしにくい、一筋縄ではいかない映画でもありますよね。一見して私はこの映画のことを「純愛映画」だと、そんな風に感じたものですが、おそらく私のこの解釈も、映画の一面だけを言い当てたものに過ぎないでしょう。
キャスト的には文句のつけようのないくらい完璧ですが、やはり妻夫木くんと深津さんの2人が本当に素晴らしい。特に、無口な2人の表情や仕草を見るだけで、それぞれの抱える「孤独さ」が身に沁みて感じられるところが、絶品の演技だと思うのです。
孤独な2人が魂と魂で触れ合うようなそんな姿は、はかなくてせつなくて、美しいとさえも感じたものです。ラブホテルの一室とか、灯台のそばの小屋の中とか、お世辞にもキレイな舞台設定ではないんですけどね。2人の愛を「純愛」と呼ばずに、他に何と呼べば良いのでしょうか。
ラストシーンがまた素晴らしくて、心から何度でも観たいと思えるシーンです。朝焼け(夕焼け?)の中、灯台から海を眺める2人のクローズアップなのですが、2人の表情の意味は……わかりません。「謎」ですね。「謎」なんだけど、観ていると不思議と涙があふれてきます。
悪人 スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]
僕はいつも作品に原作が存在する場合、それは読まずに観る。今回とて例外ではなかった。そうしてみると今回はヒロインである深津絵里が登場するまでにずいぶん時間があったなと感じた。でもこれ聞いた話によると前後編に分かれた原作でも同じだそうでヒロインの登場は前編も後半を超え、どうやら最後のほうらしい。だから原作を読まれた方なら納得だろう。
ではそれまでに何が。ここまでがこの作品の出来を左右していたような気がしてならない。そしてキャスト、スタッフ陣は見事にそれに打ち勝っていたと思う。妻夫木聡演じる主人公をいかにして殺人に駆り立てたかはもちろんのこと、細部にまでわたる登場人物たちの人となり、人間関係というのか相関図というのか。2人が報われることなどありえない逃避行に至るまでにこれらはすべて必要だったのだ。前半はそれを見事に描ききっている。
後半は逃避行と前半に描かれたことがベースになっているのはもちろんのことだが本題に入る。と、ここで様相が少し変わってゆく。2人の本当の愛を知らないカップルの物語であることに気づかされ、また同時にこれは奪われたものだけでなく、奪った者の葛藤、それだけに留まらず現実は周囲も巻き込み、恐ろしい勢いですべてを絶望へと飲み込んでいくということを実にリアルに物語る。
奪われた者ものの苦しみを描いた作品はたくさんあるけれど、奪った者にまで踏み込んだ物語は斬新でもあった。またまたこのあたりの描き方がお見事なのだ。観終わった後、深く考え込んでしまうだろう作品だが、その世界観の素晴らしさはほかでは味わえないものだった。
ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書2 「勉強」と「仕事」はどこでつながるのか
長女にプレゼントしようと購入し、パラパラとめくる
内に、入りこんでしまいました。
どの先生方の授業も素晴らしく、含蓄の多い言葉のオンパレード。
座右の銘になりそうな生きた言葉がちりばめられています。
例えば、綾戸さんの「生きたるで!」とかサイゼリアの正垣会長の「誰かの
ためだから力がでる」やロマンローランの「失敗しなかった人は何もしなかった人」
などなど。
もちろん、文脈の中で出てくるので前後を読んだ上だからこそ、心に響くのですが、
この本はぜひ、最低でも10回以上読んでほしいと思います。
(また読みやすいので、それほど時間がかからないのでは)
一般的に「成功」を収めた方が講師をされていますが、意外と
最初から〜になる!と目標を設定は見当たりませんでした。
「好きだから」とか「周りに喜ばれるから」や「流れに逆らわず〜」
といった生き方が自然に今の道にたどり着いたのも非常に興味深い。
いい大学に行けばいい会社にとかエリートコースに乗れるなどの
「打算的な」生き方でなく、どのように与えられた「いのち」を輝かせるか
是非、悩みながらで良いので、一読を願います。
一人でも多くの中高生に。もちろん、社会人の方にもお勧めです。
悪人 スタンダード・エディション [DVD]
これからご覧になられる方もおられるでしょうから、筋立ては省かせていただきますが、当初想像していたよりも、かなりシリアスな作品でした。
殺人犯と逃走する女性。被害者、加害者の家族を交互に映し出してゆきます。
一つの事件の背後には、様々な事柄が存在している状況が描き出されてゆきます。
次第に、普段我々が接している報道やニュースといったものの怖さを感じさせられることになります。
一番怖いのは、そのニュースを好奇心に満ちた目で見守る私たちかもしれません。
深津絵里さんが、モントリオール映画祭の主演女優賞を獲得したことで話題になりましたが、脇を固めた、樹木希林さん、柄本明さんが見事でした。妻夫木聡さんも渋かったです。
悪人 シナリオ版 (朝日文庫)
おのれの誕生から現在まで一瞬にして思い返し、俺は悪人だったと思わせるすごい映画。太鼓判押して傑作、必見。
そのシナリオ。
久しぶり。涙があふれていく事態になった。目前にある次々と変化する画像と私は自らの生誕から現在までを一気に振り返らされていたのだ。
自らの時間軸と この作品に登場する人たちの時間軸を比較しながら 観た。
いい作品と出会った。
映画というのは こうでないといけない。
ホンと、若い男の子と 二人の女の子。
ただし 最初の女の子 死。
そのごの 逃避行。
女が逃避行を選んだ。
ここが ユニーク。
わかる。
灯台での二人の生。
さあ、どうなるかは お楽しみに。
「悪人」って、歎異抄に述べられかつそれぞれが好きなように解釈する偉大なる「悪人」と混同してはならない。
ようするに現在の日本における「悪人」像なのだ。
自己も巻き込まれる。
そして 私は涙があふれた。そして、流れた。
いい作品に 久しぶりに出会った。
二人の若き役者の質が高いことに日本映画の希望を得た。
製作にかかわった諸氏に感謝したい。
この作品にかかわった諸氏の「座談会」が読みどころ。率直すぎる。
これまた 感動。