ドキュメンタリー ルーシー事件の真実―近年この事件ほど事実と報道が違う事件はない
書店で偶然手にとってホントによかったと思った本です。わたしは犯罪の容疑者は逮捕起訴された段階で既に犯罪者と考えてしまいがちでしたが、その思い込みの危険性に改めて気付かされました。この本を読むと、被告が被害者の死に直接の関係はないということが、裁判関係の一次資料を通じて読み取れるようになっており、法律の実際の運用のされ方等に興味のある方にはぜひ一読をおすすめします。資料ページが多いですが、検察側の主張の杜撰さが、同じく法律のプロである弁護側から説得力をもって提示されている様子がわかります。
さらに付け加えれば、反社会的な助平でありながら、ほとんど匿名で高額の寄付を続けていたというある種魅力的とわたしには思える被告の人間像に強い興味を覚えました。
ルーシー事件―闇を食う人びと
元は夕刊に連載されたものをまとめたのだろうか、同じエピソードが繰り返し出てくるなど読み難い事このうえ無し。また事件に直接は関係ない著者の思い出話も沢山あり、それが多角的な視点をもたらしているかといえば、さにあらず。著者は事件のピースをかき集めて再構成するのに苦労したそうだが、同じ苦労を読者にさせてどうする。これは著者の技量というよりは編集者の怠慢だろう。
私が編集者なら次のように構成する。まず最初に検察側の論告求刑と弁護側の最終弁論を並べて事件の概要を説明。次に検察側と弁護側が対立している重要な争点を取り上げ、裁判の過程で明らかになったことや証拠の扱い等について記述。その後、裁判の傍聴を通じて著者が持った被告の印象などを主観も交えて書く。最後に裁判を通して著者自身がたどり着いた事件の推論を改めて書けば、まとめになる。事件とは直接関係ないことだが、もし著者が取材の過程で知ったという事件の周辺にぼんやりと浮かぶSMやスナッフビデオの世界に触れたければ触れても可。著者の自己満足だけど。公判を一度だけ傍聴に来る物見遊山な人達に対する小言も入れたければどうぞ。これも著者の自己満足だけど。
世間が忘れていく事件の裁判を傍聴し続けた著者には最大限の敬意を表したいが、もし同事件で他に読みやすい書物があるならば、こちらを読むことはお薦めしない。と書くつもりだったが、もう一冊の事件関連書が輪をかけて読める代物ではなかったので、頑張ってこちらを読むしかない。何とか事件の概要はつかめるはず。
SMアンダーグラウンド
タイトルに惹かれて買いましたが
いい意味で期待を裏切られました。素晴らしい!
緻密な取材と、冷静な筆致で事件に迫っていくストーリは読み応え充分。
そして怪しく動く「アンダーグラウンド」な人々の猟奇的な実態と素顔…。
「リアル」「真実」に興味の強い自分には満足の一冊でした!
この作家の書かれた他の事件物も、読んでみたいです。