アームズ・コンサート ~三大ギタリスト夢の競演~ [DVD]
本作は83年9月に元SMALL FACESのロニー・レインの呼びかけにより、ロンドンのロイアル・アルバート・ホールで開催されたチャリティー・コンサートであり、彼自身が患っていた多発性脳脊髄硬化症という難病の研究機関(ARMS)の支援を目的としている。 レインの人柄とプロデューサー・グリン・ジョンズの手腕により大スター達の共演が実現しており、なかでもTHE YARDBIRDSに在籍したエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ(俗に言う世界3大ギタリスト)の共演が目玉であった。
70年代後半以降英国では若者を中心にロックの巨大化・商業化への反動や不景気によるフラストレーションからパンクがブームとなった他、ディスコやテクノ、そして83年頃にはニュー・ウエーブ勢が勃興しつつあり、オールド・ウエーブ勢にとっては風当たりが強かった。 実際にクラプトンは92年アンプラグドでファン層を拡大させる前であり、スティーブ・ウィンウッドは86年Higher Loveを大ヒットさせる前、ペイジは80年のLED ZEPPERIN解散以降は第一線から身を引いており、ケニー・ジョーンズは82年にTHE WHOを脱退した等過渡期(低迷期)であった。
その後、第2次英国の侵略・MTVの隆盛へと続くのであるが、この様な状況だったからこそ夢のような企画が実現したのかもしれない。 チャリティー用の急造バンドということもあり張り詰めた緊張感がなく、内容について手厳しく言う人もいる。 しかし、大スター達がエゴを捨て去り、気負いもなく、ありのままをさらけ出し、観衆と楽しもうとする姿が実に良いのだ。 3名の共演以外にも各人が見せ場を心得ていて内容は決して悪くないし、レイ・クーパーのお茶目な奮闘ぶりや、ベックがHi-Ho Silver Liningを歌うだけでも驚きなのに観衆と合唱までしたり、味わい深いレインのエンディング等見せ場は多い。 画質・音質とも良好。 オススメの1枚。
ワン・プラス・ワン [DVD]
1968年のアルバム「ベガーズ・バンケット」に収録されている
「悪魔を憐れむ歌」の製作過程を追ったドキュメンタリービデオ。
どっぷりとクスリ漬けになってしまったブライアン・ジョーンズが痛々しい。
ゴダールのイメージに沿って収録されたがミック・ジャガーは
未だにそのコンセプトが解らないらしい。
ソフィスティケイテッド・レディース
チャーリー・ヘイデンの「カルテット・ウエスト」12年振りの新作は、キース・ジャレットとのデュオ名作「ジャスミン」とは違う意味で味わい深い。「ジャスミン」が気のおけない親友同士の内輪の会話に聞き耳を立てるようなスリリングな趣きがあったのに対して、こちらはよく考え抜かれた手だれの芸を安心して楽しむことができる。
ダイアナ・クラールやノラ・ジョーンズ、メロディ・ガルローなど6人の歌姫が入れ替わり立ち替わり、舞台に現れては消えて行く。まるで往年のハリウッドのオムニバス映画を観るように、情感と余韻たっぷりな、ひとときのファンタジーを味わいたい。
ヘイデンはじめ、アーニー・ワッツやピアノのアラン・ブロードベントもベテランらしく、でしゃばりもせず、時には主役、時には脇役と、しっかりと自分の役割を知っている。
大人の男が、家族が寝静まった後、ヘッドフォンでグラス片手に聴くにふさわしい至福の一編。