錻力の太鼓 (CCCD)
これはなんと豪華なBOX仕様ではないですか!
中身は24ページブックレット、ボーナスCDはメンバーの顔写真の紙ジャケ、ティン・ドラム本体は3面開きデジパック。
これだけで買いでしょう。
ブリキの太鼓 1 (集英社文庫 ク 2-2)
正直なところ、ようやく第一部を読み終えた、というのが率直な思いである。
特に難しい単語が使われているわけではない。
でも、この小説は他の小説で同じ分量を読了した時より、数倍疲労感がある。
この小説は書かれた内容をそのままに捉えるのではなく、
当時の漠然とした不安な世相や、人間が根源的にもつ欲望や心理など
いままで数多くの小説家や芸術家が、その完全な描写化に挑戦したが
表面をなぞるだけか、あるいは全くの失敗に終わっていたものを
グラスはこの作品により、描写化への完成へ大きく近づいた
というようなことが一般的な評価だろう。
つまり、この小説ではそれぞれの表現に隠喩(メタファー)が存在し、
すなわちオモテとウラとで多面的な意味が盛り込まれているため
読者は隠喩を正確に読み解かなければ、
いくら読んでも作者の意図の数パーセントも理解できていないという、
まさに読者の読む力が試される恐ろしい作品なのである。
そう、この小説の正体はまさに、3歳児のこどもである。
表面上は、ニコニコしたイノセントな子どもに見える。
しかし、無用心に近づくと本当に痛い目にあう。
3歳の子どもなのに、大人と接する時以上に体力と精神力がいる。
やっかいだ。理解不能だ。子どもって何考えているのかわからない。
自分のペースを完全に壊されてしまう。疲れる。
でも楽しい。愛らしい。複雑な気分。
スマイルBEST ブリキの太鼓 HDニューマスター版 スタンダード・エディション [DVD]
時代背景も良いし、人種を厳選した映画内容にもかなり興味がそそられる作品でした。ただ、少々理解の欠ける無理やりなストーリー編成と複雑な人々の困惑する性格には理解に欠けるものがありましたが、フランス映画等に良くある考えさせながら観れる映画の一つとしてステキな映画だと思いました。
眩暈(めまい)
訳あって週に一度図書館に行き、その都度約二時間、だいたい三ヶ月で読了となりました。いたしかたなかったとはいえ、そして先が気になるもどかしさに悶々と身を捩らされることにもなりはしましたが、結果としてはそうした読み方をしたことがあるいはよかったのでは、と今では思われます。というのもこの物語は、強烈な残像を残さずにはおかない簡潔な単文節の精緻な折り重なりによって語られていくのですが、それは少なくともわたしには、一週間のブランクを空けることによってようやく咀嚼しうるものであったように思われるからだし、その筆鋒は他に類を見ないくらい、じつに鋭利だったからです。「現代最高の中国学者キーン」及びその周辺の人びとの口を借り、まさに情け容赦のないそのペンによって自らが切り刻まれていく過程は、実際恐怖に近いものがありました。と同時に、言うまでもなくそれはある種の「ほどけ」を伴う愉悦でもあった。何かしら福音めいたものが訪れるわけではありませんが、一種の危機的状況に対し極めて有効に働く回路としての物語、一読した今はそんな印象を持っています。次に読む際には自分がどう感じるか、それがとても楽しみです。
ブリキの太鼓 (池澤夏樹=個人編集世界文学全集2)
池澤夏樹の責任編集による世界文学全集の1冊。
この有名な小説については、その題名も知っているし、映画化された際には観たこともあるし、ギュンター・グラスがノーベル文学賞を受賞したことも知ってはいたのだが、いまごろになって初めて読んだ。
映画化された際は、アカデミー賞を受賞したりと評判になったのだが、当時、中学生、高校生の自分は、その良さほとんどわからず、この小説自体の興味もほとんど持たなかったのだが、その後、グラスの過去の武装親衛隊所属問題などによって改めて関心を持つようになり、この全集に収録されたのをきっかけに読んでみた。
小説自体は、自らの意志で、3歳で成長を止めた主人公のオスカルの独白で、彼の数奇な人生を描いているが、グラスの故郷であるダンツィヒ(現在はポーランド領のグダニスク)の街が、ナチの勃興と没落を切り抜けていく様子も描かれており、単純な寓話ではない。
成長を拒否する主人公に、グラスは何を仮託したのか。3歳の幼児の姿をした怪物、freakが巻き起こすグロテスクな喜劇が、ナチスドイツ、そしてそれに賛同し、追随していったドイツ国民の行いを嘲笑する。そこに何を読むべきなのだろううか。