薔薇の名前 [VHS]
修道院で死人が出たのでウイリアム(ショーン・コネリー)が調査する。前半はサスペンス仕立てで物語は進む。後半、殺人の動機があかされるが、現代では理解しにくい理由。昔は大変だったのだなあ、といったぐらいの感情移入しかできない。キリスト教的セクト争いにも閉口する。が、描かれている映像のリテールに引き込まれる。「信仰と狂気は近い」という言葉どおりの物理的精神的に閉ざされた世界観は見物。肥満気味の男色修道士の死体を検死する場面で死体が瞬きするのはご愛敬。DVDまたはHD映像で見てみたい。
薔薇の名前 特別版 [DVD]
この映画、恥ずかしながら、20年くらいの間に、VHS、TV放送、DVDとトライして、実は5度目位の鑑賞で全編見続けることができた。その後は、もちろんお気に入りの映画の一つである。
それだけ、私にとっては、最初は少し難解でとっつきにくかった独特の世界観をもつ作品。原作を読んでいないので、それもお恥ずかしいが、たぶん映像になっているものの方が解りやすいような気がして、まだ目を通していない。
中世の暗黒部分の歴史に触れるということ。それだけでもう、知ってはいけない、見てはいけないような気にさせられた。
14世紀初頭の北イタリアの修道院で行われる会議のために、ウィリアム修道士(S・コネリー)と彼の弟子のアドソ(C・スレーター)が訪れる。その修道院で連続殺人が起こり、ウィリアム達が謎を解いていくミステリー。
おどろおどろしい、中世の雰囲気が濃厚に描かれる。文書館などのセットを筆頭に美術、小道具に至るまで、こだわりぬいて作られていて素晴らしい。アノー監督のリアルで少し残酷で退廃的で官能的な映像美に触れた。
そして、何よりS・コネリーの重厚だが、知的でウィットに富んだ会話が魅力的で、弟子を優しく真理の道へと導いていく演技がいい。
「宗教」とは何か?戒律は誰がつくり、誰のためのものなのか?を考えさせられる。
異端とされる者たちへの残虐きわまりない刑は、本来は人間として許されないことである。教会では食べ物にも困らない生活をしているのに、村人は修道士達が捨てたごみを拾い食らいつく。
アドソが村の女と、肉体関係を結ぶが、そのことに関してのウィリアムの反応が、実に人間味にあふれていい場面だな、と思った。
ラストも、温かな慈愛の精神と救いが余韻に残る。
バウドリーノ(下)
聖地を目指す十字軍の途上、バウドリーノの愛する養父・神聖ローマ皇帝フリードリヒは謎の死を遂げます。
彼の志を引き継ぐため、バウドリーノは東方にあるという「司祭ヨハネの王国」目指して、11人の仲間と共に冒険の旅へ出発します。
道中彼らが出くわすのは……キマイラ、マンティコア、岩石の流れる川、一本足の人間、頭なし人間、一角獣を連れた貴婦人、それにロック鳥……???
あまりに荒唐無稽な冒険譚に、聞き手のニケタスも、そして読み手のわたしたちも当惑せざるを得ません。いったいこれは真実なのか?それとも嘘なのか?それとも嘘を通して語られた何かの真実なのか? 分かりません……なにしろバウドリーノは「大嘘つき」なのですから。
ファンタジーか、それとも推理小説かと楽しませてくれる展開はさすがエーコです。にもかかわらずこの冒険を実在の人物に聞かせて歴史のなかにもぐりこませる抜け目なさ。そして、冒険の人生の果てにバウドリーノが辿り着いた「真実」とは何か? おそらく期待を裏切られる読者はいないはず。
薔薇の名前 特別版 [DVD]
時代設定や背景などはダン・ブラウンの小説の元になりそうなキリスト教の暗部ですが、そのような史実に興味が無くても、主演の二人の絶妙な掛け合いで、十分楽しめます。内容もサスペンスと捉えて鑑賞すべき名作です。
ただし、オカルトを期待するとかなりハズれます。
薔薇の名前 特別版 [DVD]
画質はあまり良くない.全体的にフォーカスが甘く、ざらついた感じの画面の上に色合いが何となく橙色っぽくくすんで色褪せた印象.劇場や LD で観た時にはもっとずっと鮮やかな色あいで、特に濃紺から漆黒の影の部分と蝋燭の炎のコントラストがとても鮮明で美しかった記憶があるのだが....
それとはあまり関係ないが、ディスク自体はリージョン 2 なのに何と 8 ヶ国語(日本語、英語、スペイン語、ポルトガル語、中国語、ハングル、インドネシア語、タイ語)の字幕がついていて、デフォルト字幕は英語らしい.字幕の言語が多いのは歓迎だけど、その割に北イタリアの修道院が舞台で原作もイタリアなのにイタリア語字幕は無し、というなんだかよくわからない造りになってる.
が、そういった欠点を補って余りあるほど作品は素晴らしい.原作の素晴らしさもさることながら、原作の素材を変幻自在に調理してみせる監督(ジャン・ジャック・アノー)の手腕がひと際冴えている.原作は難解な哲学的言説の衣をまといながらも本格ミステリーとしても読めるように仕上げられていて、プロットとしてこの切り口に注目したのがこの作品を超一級のエンターテインメントとして成立させている.特にあの修道院の図書館は原作においても重要な役割を担う道具立てなのだが、その迷路をあのような造形で見せてしまうところなどその秀逸なアイデアに脱帽.
主演のショーン・コネリーも素晴らしく、文句なくこの人の最高作だろうと思う.「007」の頃の生臭さとはえらい違いで、これくらいかっこよく年齢を重ねられたらいいのになーと思うことしきり.
この DVD には、LD 版ではカットされていたシーンがいくつか収録されているようだ.特別版というのはそう意味なのかな.おかげで、単なるボケ老人としか思えなかったウベルティーノ師が実はなかなかの慧眼の持ち主だということがわかったり、新たな発見が得られるのも楽しい.