いつも春のよう 増補版 (ビームコミックス文庫)
あすなひろしという漫画家が好きです。なぜなら、この人の描く漫画は、色んな人間の視点を的確に捉えていて、色んなものがとても感性豊かに描かれているからです。 そして、この人が、自身が描く漫画に出てくるキャラクターを、こんな風に評しています。「この人達は教育も労働も権利として楽しんで、力強く生きている人達で、アルコールに逃げなければ生きてゆけない、弱い弱い僕が憧れる人達です」と。 この言葉が、綺麗な絵と一緒に、自分の心に印象深く残っています。 マニアックかもしれないけどみんなに是非とも読んでほしい作家です。
青い空を、白い雲がかけてった 完全版 上 (ビームコミックス文庫)
前に同社で復刻された時に、完全収録されていれば…と思いました。
ほとんどスクリーントーンを使わず、アミ線や点描で表現する作家なので
文庫サイズでは絵がもったいない…と思ったので-☆1。
ただ、爆発的に売れるとは思えない『あすなひろし』のマンガを復刻した
エンターブレインの英断に感謝です。ありがとう。
青い空を、白い雲がかけてった 完全版 下 (ビームコミックス文庫)
この完全版も出たことですし、ビームさん
にはもう少し欲張って「風と海とサブ」と
「サムの大空」というあすなさんのあと
もう二つの名作も復刻してほしいなあ・・・。
「少年チャンピオン」連載時以降のあすなさんは、
飲めないのにお酒に逃げこんでアル中になった、
とお聞きしています。
この本や「サブ」「サム」を読むと、
その理由がわかるような気がします。
あすなさんの描く漫画の登場人物はいつも
ニコニコしているけど、心の中にはぬぐえない闇が
いっぱい、に思えます。
たかが、な日常のありふれたすれ違いや失意が、
どれだけ人の心を傷付け、立ち止まらせようと
手ぐすねひいていることでしょうか。
チャンピオンコミックスの扉にいつも掲載されていた、
あすなさんの短い独白は、今読むと胸がつぶれそうです!!
それでもあすなさんは、空しさや絶望と
闘って、ぼくらにこんな素晴らしい作品を
来世紀にまで遺してくれました!!
絵だけ見てもいい、読んで手ごたえなくても、
心がクサってなきゃいつか「ああっ!!」って
思う瞬間がある、そんな漫画です。
あすなさんが大好きだった、小川未明や宮沢賢治の
童話と通じる、底の底に秘められた怒りや涙を、
のほほん、とした調子で描いた、唯一無二の
不思議な世界です!!