金魂巻―現代人気職業三十一の金持ビンボー人の表層と力と構造
「マル金」と「マルビ」という言葉が流行語大賞にも選ばれたベストセラー『金魂巻』が文庫になって帰ってきました。
オリジナルは、1984年に発売されたものですから、四半世紀の月日が流れたわけです。日本経済が世界の頂点に立ち、その先に待ち受けているものがバブル経済だとも知らずに、明るい未来を信じて突き進んでいた頃の日本の様々な職業人の実態を、故・渡辺和博氏、神足裕司氏のイラスト、文章、企画が見事に浮き彫りにしていました。
31の人気職業はどちらかというと作者の身近なマスコミ関係者が多くなっていますが、時代のあだ花のような趣もあり、今見てみると社会学や考現学、経済学の材料に使えるような意味合いも感じます。
選ばれた「マル金」と「マルビ」も、取材対象者の身長、体重、年齢、出身学校、実家、年収、自宅、オフィス、仕事、読書、酒場での話題、趣味などの基礎データが詳しく書かれていますので、その比較が興味を惹くでしょう。丁寧な取材の結果がイラストにも表れていました。具体的なファッション・アイテムが描かれていますので、なるほどそうか、というイメージが造り上げられました。
タラコ・プロダクションがこの企画を各週刊誌に持ち込んでもどこの編集部も相手にしなかったわけで、主婦の友社の編集者の松川氏の炯眼が光ります。
「マルビ」の生活は大変そうですが、現在の2極化した日本の閉塞性を考えれば、まだ幸せな「マルビ」の実態だと思いました。なにしろ笑い飛ばすことができる余裕が周りにも当事者にもあったわけですから。
これが再発売される今日的な意味合いもそこにあるように感じました。
いまどきのニホン語 和英辞典 俗語・流行語・業界用語~なにげに使ってるコトバを英語にしてみる
題名につられて、さっそく買いました。本書は、新語、流行語、卑語、俗語、慣用語、業界の隠語の辞書です。いまどきのニホン語は古い世代にはちんぷんかんぷんなものが多いのですが、この種の言葉は、ふつうの辞書にはあまり載っていないので、本書の刊行はたいへん助かります。本書は和英辞典ですが、新語、流行語、若者語の国語辞典としても役に立ちます。
ビジネスの場における外国人とのコミュニケーションで流行語、卑語、俗語の類を乱用するのは考え物です。本書の場合、見出し語こそ新奇なニホン語ですが、英訳は標準英語の説明訳が多く、面白さに欠けるうらみがあるものの、安心して使えます。それに、本書は読み物としても楽しめます。