poco A poco
以前『dolce (DVD付)』のレビューで→を書きました。「音は硬く、粒が揃っていません。しかも、そういう演奏法やピアニストの個性というわけではなく、ピアノを自分のものに出来ていないという感じ。しかし、松下奈緒さん自身の音を誠実に模索している様子や、柔らかくて優しくて穏やかな人柄が伝わってくる演奏でした。(伴奏は上手い)(中略)プロデューサーやスタッフの力量や、大島ミチル・松谷卓・GONTITI・羽毛田丈史…等の楽曲提供や演奏のサポートのおかげか、とても聴き心地が良い完成度が高いヒーリング/イージーリスニング/ニューエイジになっています。」この感想は、ピアノ曲に関しては全く変わっていません。今回はジャズを取り入れてポップ路線も模索しているみたいですが、クラシックやヨーロッパ映画のサントラのような音楽を極めるタイプじゃなさそうなので、曲調の幅が広がるのは良いんじゃないでしょうか。
問題なのは歌。歌唱力は、上手くないけれど、『Moonshine~月あかり~』のレビューで酷評されるほど酷いとは思いません。しかし、東京音大を卒業しているだけあって素養は有ると思いますが、声質は恵まれているとは思えませんし、それを補える圧倒的な歌唱テクニックや表現力や個性にも欠けているように感じます。更に厳しいことを言えば、「何としても歌いたい」というよりは「とりあえず歌に挑戦してみよう」という感じがします。
ピアノ曲は良いんですが、歌は聴きたくありません。今度アルバムを出す時は、ピアノ曲ならピアノ曲、歌なら歌で全曲統一して欲しいです。
Golden Week for the Poco Beat
M-1ウェルカム感いっぱいの笑顔で牧歌的にポップなリズム、
うっかりするとサザエさんのエンディングとごっちゃになりそうな絶妙アレンジ、
M-2,3インド映画のサントラみたいにカラフルでポップな帰り道、
お家を通り過ぎちゃいそうなご機嫌な酔っ払いの朝帰りソングか?
M-4いきなりのGSチックな展開に驚き、
M-5のシーン入替を示唆するようなインスト曲とM-6のスキャットの後、
M-7,8,9が後期エゴ・ラッピンを思わせる昭和歌謡ロックの大マジな展開に感心する間もなく、
M-10のこれまた巨大なシリアス・モードの曲を歌い上げ、
M-11で再び日の出を見ようかというくらいピュアなアレンジをはさみ、
M-12でそうはさせまいと田舎娘がロンドン・パンクを差し向かいで語らって帰らせないしつこさをみせ、
M-13最後は飲み疲れたのか、子守唄のように静かに聴こえてきて眠る
そんなひどくまとまらない感じでいっぱいのアルバムなのに、
ヴォーカルの娘っこのジュリー・アンドリュースばりの小気味良い歌い上げ方ひとつで
不思議とまとまった世界観を確立しちゃってるからすごい
探してたどり着くタイプのバンドじゃないだろうけど、
うっかり出くわしたもんなら、私同様はまっちゃう音楽ファンは多数いるだろうなと思う
たいくつしないインディ・ポップでたまに聴くにはすごくいいアルバムなのでおすすめします!
ライヴ・ポコ
米国出身のカントリー・ロック・バンドの、’71年発表のライヴ盤。
陽気で朗らかなカントリー・ロックと言ええど、流石実力者揃いのバンドだけあって、その正確かつ余裕を感じさせる演奏力には屈服させられる。
特にそれを感じさせるのは、ライヴならではの58のメドレーだ。攻撃的でもなく、過剰な緊張感はないのに、テクニカルな演奏を和気藹々とやっている楽しそうな雰囲気に、知らず知らずのうちに引き込まれてゆく。
また、コーラス・ワークも抜群で、気取りのない自然なハーモニーは絶品だ。
カントリー・ロックの魅力を余すことなく伝えてくれる、和やかで楽しさのある中に、緊張感が潜んでいるのを実感できるライヴ盤である。