ブランク・ジェネレーション
リチャード・ヘルか・・・彼をリアルタイムで聴いてた人ってどれ程いるんだろう?SEX PISTOLSが"パンク"をオーバーグランドに引き上げ、あっという間に解散し、伝説化した。その伝説の一つにこのヘルに影響を少なからず受けたというのがある。が、両者の音楽に"それ"を見つけることは、私にはできない。ブランクジェネレーションに代表される抽象的かつ文学的な歌詞、S.PISTOLSの強烈な世界を提示したものとは、対極にあると思う。あくまでもまずPISTOLSありき、その後にヘルの話が出てきた、そんなところではないか。代表曲「ブランクジェネレーション」が、1959年の映画"ザ・ビート・ジェネレーション"の主題歌の替え歌!であることを何人の人が知っているだろう。そこに本物のオリジナリティを私は、見出せないでいるのだが・・・
Spurts: The Richard Hell Story
ネオン・ボーイズから最近までの活動をまとめたベスト盤。このアルバム用にリミックスやエディットされたものがかなりあります。出来ればオーク盤のシングル全部を収録してほしかったです。入門盤としてもマニア向けにもよく出来た編集だと思います。TelevisionでのBlank generationが公式に聴けるのはこのベスト盤だけです。
GO NOW
「70年代パンクとドラッグ」、この二つの言葉がペアになっただけでアレルギーを起こしてしまう人は沢山いるかもしれない。狂気と混乱、無謀、孤独が転げ回っているだけ、と決めかかって読み出すのはあながち間違いとも言えないが、少し読み進むとすぐにそれが間違いなのだと気づかせられる。やることは目茶苦茶な主人公だが、狂気と甘えの境目に確かに存在する「正気」が確かにあって、それがストーリーを一本に繋いでいく。読んでいる途中、ビム・ベンダースのロード・ムービーが何度も思い出された。この本は言葉で語られているにもかかわらず、鮮明で強烈な映像を読み手の脳裏に強烈に描き出すのだ。一般に(と書いては語弊があるかもしれないが)こういう本はテーマや語り口ゆえに、翻訳された途端に原文の持つテイストを損ねがちであるが、思い切った言葉の選択、かつそれが的確であるところが、「翻訳された」という間接性を感じさせない。ストーリーは意外なところで終わりとなった感があるが(あくまで私見)、これは著者であるリチャード・ヘルの、詩人またはミュージシャンとしての過去背景を考えると納得がいってしまった。