立川談笑
こんにゃく問答をイスラム圏に移植した、シシカバブ問答。
口上が大阪弁ではなく津軽弁でなされる、金明竹。
この演者による初落語化である、河内山宗俊。
そば屋を特異なキャラクターにするなどの工夫がなされて
いる、時そば。
しばしば下品なギャグの挿入があるにも関わらず、全体は
極めて綿密に構成されており知性を感じさせる。
工夫や改作も単なる思いつきの水準では終らせない。
作品を成立させるために、かなりの時間と調査をしているこ
とを感じざるを得ない。
乱暴な口調も妙に心地よく、全作品がほどほどの時間でまと
められているため、飽きずに繰りかえして聞いてしまう魅力
があるCD。
シシカバブ問答では、楽屋に居た談志師匠が落語の途中で
割り込んでくるハプニングがある。イスラム文化において、
登場人物がそのような行為をするのはおかしいのではない
かと指摘するためだ。師匠の突然の闖入を、談笑師は人を
くった切り返しで処理してしまうのが面白い。
仲里依紗フォトブック『anno1989』
アイドルや女優が簡単に写真集を出してしまう昨今にあって、二十歳にして初の、ファン待望の写真集です。
2005年にはCM美少女で、2006年にはアニメ『時をかける少女』声優で、
2008年にはドラマ『ハチワンダイバー』メイド役や映画『純喫茶磯辺』出演で注目されてきた彼女ですが、
さらに今年2010年は実写版『時をかける少女』主演や『ゼブラーマン2』ヒロインと、さらなる活躍が期待されています。
今まで雑誌のグラビアなど数ページでしか見られなかった彼女を、1冊まるごと見られるわけで、ファンは必携です。
内容については、スウェーデン人とのクオーターである彼女が、ルーツ探しともいうべきスウェーデンへの旅立ちを追っています。
実際スウェーデンには初めて行ったようで、親戚の方たちも写真に納まっています。
写真については、近景遠景のメリハリやポーズ写真ばかりにならないよう、単調にならない工夫がされていると思いました。
注目部分としては、過去水着になったりしなかった彼女が、胸を強調するようなセクシー写真があることでしょうか。
後半部分には生い立ちや芸能活動を始めた経緯、今後のことについても語っています。
写真ばかりでなく、文章も入るというのは好感が持てます。
個人的には、文章の中に髪を切ってショートにしようかとのくだりもあり、ショートヘアの彼女も見てみたいなと思った次第です。
これからも彼女の活躍を見続けていきたいと改めて感じました。
日本語と津軽弁―方言の持つ伝統の味わいとは
本書は津軽弁《ネイティブ》より,津軽弁を話せない人のほうが理解しやすいかもしれない.「I 津軽弁の語彙」は津軽弁〈文法〉編として読めばいい.具体的な会話にみられる語の音(おん)や語尾の変化が多くの用例とともに紹介されており,安易な語源さがしは慎重に避けられている.
筆者はこれまで『津軽弁の世界』シリーズをとおして津軽弁の音韻・語源に着目し,ときには他方言との共通性も指摘しながら,日本基語や古語との近親性・類似性などの特質を論じてきた.どちらかといえばネイティブには,方言を日本語のなかに位置づけた「津軽弁小辞典」として理解されてきた.
しかし,本書はこれまでの「津軽弁と日本語」の世界を反転させ,方言から日本祖語を展望する方法をとる.もとより津軽弁は話し言葉であるが,対象とされているのは日本語そのものであるように思われる.津軽弁のアクセントや音の質がその切り口になっている.方言の古層を掘りおこし,日本語の歴史に横たわる大きな鉱脈の一端にふれようとする試みといってよい.
とくに,いまでも津軽弁の発声にみとめられるという上代語の中舌母音から,さらに時代をさかのぼった日本祖語を論じた「II 母音の内容と交替」は示唆に富む.つい,不安とともに中舌母音の舌の位置を確かめてしまった.ただし,日本語における中舌母音の衰退を社会・権力構造の変化にみる反映理論にはやや無理がある.もっとも,別の箇所では「縄文時代から本格化した日本祖語とその語の歴史,そして津軽地域に住んでいる,あるいは他方言を持ちながら移住してきた人たちの歴史との多元的な関連から考えるべきこと」(p. 18)としているが.
方言のコジツケにちかい解釈・解説が横行し多くの俗説を生んできた.本書は新しい津軽弁入門であると同時に,方言研究入門のテキストとしても有用であろう.索引のないのが惜しまれる.
ウルトラミラクルラブストーリー [DVD]
松山ケンイチが演じるような青年は世界中に点在している。彼らの頭の中のヘリコプターは爆音をたてて農薬を撒き続けていることを最初に体感する事が出来る。映画の中の青年は、とても健やかにのびのびと生活し、彼の周りの人々も自然であたりまえに彼に接する。小さな町が、青々とした田んぼや森の緑のせいで楽園のように見えて、ほんの小さなエピソードにすら嘘や作り事がないので、子供の絵本のような話の流れも無理なく納得することができる。それに耳慣れない東北の言葉は響きも心地よく、映画に色を添える。
にぎやかなひとりごと
小学校3年生以来伊奈かっぺい氏のトークを聞いているが,このバージョンが最も面白いCDだと今でも思っている。
今は,いい意味で円熟し上品になってしまった感があるが,この頃のかっぺいさんは,最もエネルギッシュかつ,精力的にネタ作りをしていた様子が伺え(下品ということではなく),特にこのCDはかっぺいライブのエッセンスが凝縮されているように思われる。その意味で,初めて1枚を買うというときにはオススメである。
「にぎやかなひとりごと」は,それまではネガティブに捉えられ,隠すべきとされた方言を可視化し,その面白さを認識させてくれるだけではなく,ささやかな日常の中でのペーソスが深刻すぎず,軽すぎずリズムよく語られていていることに共感がもてる。また,年を重ねるにつれてわかる部分もあり,魅力は尽きるところがない。
昨今のお笑いブームの「軽やかな」笑いとは一線を画した別の面白さ,時に知的な笑いとでも言うのだろうか-言葉で遊ぶという愉しみが,このライブにはある。