〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性
労作だと思います。
さまざまの言説が錯綜しわかりにくい太平洋戦争後の半世紀を整理した点で評価できます。終戦後から55年体制成立までを「第一の戦後」、それ以後から冷戦の終結までを「第二の戦後」、冷戦終結から現在までを「第三の戦後」とした分析はわかりやすいです。
著者自身が序章で断っているように、研究論文としては不備も多く、主観が入りすぎているきらいはありますが、戦後思想史を俯瞰するのにはこれ以上の著作はないでしょう。
個人的には典型的日本人と思う吉本隆明を分析した第14章が非常に啓発されました。彼が体現した生き方が現在の日本の思想状況を生み出している、と思うだけに。
現在が「第三の戦後」なのか、「新しい戦前」なのかは今後の歴史の展開を待たねば判断できませんが、国民国家の理念が消失し、19世紀的な「帝国の時代」に回帰している、という感じです。明治初期に戻って近代思想を再点検するべき時なのかもしれません。
繰り返し読みたい日本の名詩一〇〇
詩集を初めて買う方にも、そうじゃない方にもお勧めな一冊です。高村光太郎の「レモン哀歌」や中原中也の「汚れちまった悲しみに…」など。皆一度はどこかで読んだ事があるような代表的な詩ばかり。
ちなみに私は石垣りんさんの「くらし」が好き (・_|
いろんな人の詩が入ってるので、新しい詩人との出合いがあるかも。
お勧め!
小熊秀雄詩集 (岩波文庫 緑 99-1)
小熊秀雄の3つの詩集が一冊になった感じなのに、とてもコンパクトです。小熊の世界が概観できるオススメの一冊です。現実に苦しんでいる人なら、どこかで共感できる言葉に出会う一冊だと思います。「闇が暗ければ、星は光るんだ、君はその星の光りを見落としてはならない」・・・ああ、そうだよな!と、元気づけてくれる、はげましてくれる詩集です。