信長の棺〈上〉 (文春文庫)
本書は75歳の新人(?)作家による
本能寺の変をめぐる様々な謎の解明を試みた意欲作。
主人公は信長や秀吉に仕え、「信長公記」の著者としても知られている太田牛一。
本書の著者と同様に牛一も70過ぎの老人であり、
信長の謎を追う牛一の姿は次第に著者の分身の様に思えてくる。
そんな牛一が美貌の若い女性に惚れられて子供まで儲けてしまう所には
思わず苦笑してしまったが、
終りのほうで牛一が「老いの妄想とお笑いくだされ」と言ったセリフは、
牛一の口を借りた著者自身の言葉と私は理解した。
本能寺の変や桶狭間の合戦にまつわる様々な謎や秀吉の出自の秘密などが、
テンポ良く明らかになっていき(都合良すぎる展開もあるが)、
最後まで飽きずに一気読みできる。
朗読 日本童話名作選「でんでんむしのかなしみ」
自宅介護している病気の父親のために購入しました。
たくさんの話が入っていることと話し手さんの話し方が非常に聞きやすいので良いと思いました。
父親は、それなりの年齢のため、知らない話が多いかもしれませんが、基本的に童話ですので誰でも楽しめる内容だと思いました。
大いなる旅路 [DVD]
当時の国鉄の全面協力により、通常では考えられないアングルで多くの機関車を視る事ができます。盛岡機関区を中心に機関助手から始まり、機関士になるまで、現場一筋に頑張る主人公の30年以上にわたる物語です。モノクロ、モノラルながら、画面はきれいです。冬の鉄路に雪崩れが発生し、大正生まれの名機関車8620型を実際に転覆させてしまうのは、国鉄の全面協力の賜物です。これは、予告編で、カメラの前にすんでの所まで落ちてくる機関車が3台目のカメラで捉えられているのが判ります。ひょんな出逢いから、結婚し、4人の子供が生まれ、2人が戦死等により亡くなります。次男(若い高倉健が演じます)が運転する特急こだまに両親が乗り、旅をします。映画の中で2回、夜の列車が窓の明かりを灯しながら走るところを夫婦で視る場面は、自分たちが歩んできた人生とこれからの人生を列車による旅に見立てているのでしょう。良いシーンだと思います。なお、この作品は昭和35年公開の作品であり、撮影に2年間をかけたそうです。日本最初のカラー映画「カルメン故郷に帰る」が昭和33年公開ですから、モノクロ撮影は当然でしょう。
信長の棺〈下〉 (文春文庫)
織田信長の伝記「信長公記」を著した信長の家臣であった太田牛一、その人の目を通して本能寺の変の真実に迫る奇想天外な小説である。信長の近臣であった太田牛一の目を通して真実に迫る探求は、着想として創造的と言えよう。太田牛一を主人公に配することで、時代状況の描き方が新鮮になっているように感じられる。
織田信長の将来構想に始まり、明智光秀の本能寺の反乱を経て、豊臣秀吉の時代へと移行する過程が太田牛一の目を通して語られていく。本能寺の変における明智光秀の表面的な反乱とは別に、織田信長を死に追いやる影の人物も強ち嘘とはいえない時代状況であったかもしれない。圧巻は小説のタイトルにも連なる信長の遺骸が秘密裏に埋められていたことだろう。多くの材料を用意し、読者に先へ先へと読み進む興味を起こさせる小説である。本能寺の変に関心のある方は、入門的にも読んで楽しめる小説であるように思う。