「バロン・サツマ」と呼ばれた男―薩摩治郎八とその時代
こんな日本人がいたのかと驚きました。一東洋人が、大正時代のパリでこんな華々しいことをと感嘆する一方、きっとパリの芸術家たちもそうであったように、バロン・サツマの人間としての魅力に惹かれました。人間を、芸術を、フランスを、日本を、人生を愛した治郎八。治郎八が私財でパリに日本館を設立することで、多くの留学生たちが様々な分野の人と交流し見聞を広め、その後の日本での活躍につながったことは、近代の日本文化の礎を築いたともいえますね。一代で財をなす祖父の時代から、華やかなパリの時代、無一文になった晩年へ・・自伝を裏付ける記録としても、人名と数字に、真実に迫る著者の情熱が込められているようです。それにしても著名となる人々が皆パリを目指した時代の熱気と…人間同志の交流に化学反応のような不思議さが…
北上次郎選「昭和エンターテインメント叢書」(2)大番 上 (小学館文庫)
主要登場人物にモデルがあり、株式会社や証券会社もモデルがある。つまり戦前の昭和の証券業界を背景に戦前戦後の変遷を描いた経済小説だが、当時の花柳界や風俗の世界も描く。主人公やヒロインの人間関係の緊密さと躍動が面白い。いまは映画ですら描く事の困難な昭和の社会の雰囲気を味わわせるのは作者ならではともいえる。戦後における華族の没落や、戦中の闇取引き。226事件からスターリン死去までの動きを挿入した昭和の歴史の展開も興味深い。昭和初年生まれの私には年代ごとに事件が思い出されて懐かしい。そして私はこれは名作だと考えている。
淡島千景・原節子らの競演による映画で一層人気があったが、かつて製作されたビデオ(全4巻)もないのが惜しまれる。ただ主人公ギュウちゃんを商標にした銘菓「大番」はいまも宇和島市で数軒が製造しよく売れているのが愉快だ。
わが食いしん坊 (グルメ文庫)
獅子文六先生の本は食べ物関係しか読んでないですけど、何度読んでもも面白いです。
妙にフレンチ絶賛のところがあるけれども・・・・
何度でも読み返せる、買う価値のある本です!