史上最強の人生戦略マニュアル
自己啓発本というよりは、コーチングのセミナーに紙面上で参加しているような本です。「最悪の日を経験した者には、悪い日も快く感じるだろう」というゲーテの言葉がありますが、受け取り方に始まり、状況が作られる中での自己関与が状況を構成し、結局自分に戻るという極めて現実的な本と思います。「評論家」として読むのでなければ、十分に通用する翻訳と思います(ただ、ちょっと理解しにくいところがあるのも事実)。ここまで書かれると怖いですが、カウンセリングやコーチングのなかでの「自己変容」と起こすきっかけとなれる本だと思いました。
生命と食 (岩波ブックレット)
本書は講演内容を基に作られた60ページの小冊子
です。狂牛病を通して、食の安全や、生命にとって
不可欠な食べるという行為について少し根本的な
生物学視点からの問題提示がなされています。
本書では、食の安全性に対して危険をやたらと
煽っているわけではありませんが、自分が生物であり、
地球の一部であることを謙虚に受け止められれば、
福岡氏の想いにも共感できるのではないでしょうか?
もしかすると、スーパーなどの食品売り場で、
安売りばかりを購入するというような行為を見直す
きっかけになるかもしれません。(私も反省。)
「生物と無生物のあいだ」で興味を持ち、本書を
読んでみましたが、今回は(?)難しい単語もなく
ささっと読めます。但し、健康、身体、食べ物に
興味を持っている方が読んでも、少し物足りなさを
感じるかもしれません。
プリオン説はほんとうか? (ブルーバックス)
福岡先生の「生物と無生物のあいだ」を読んで感激した後、遅ればせながらこの本を手に取りました。本書を読み通すと「星の王子さま」の有名なせりふ
"On ne voit bien qu'avec le coeur. L'essentiel est invisible pour les yeux."(物事は心でしか見ることができない。 大切なことは目には見えない)
を思い出しました。科学者が実験の生データに接するとき、その科学者の心のありようで結果の読み方が変わりうる訳です。(科学って、けっこう"人間臭い"のです) 同じデータでもプルシナーの心眼(プリオン説)から見るのと、福岡先生の心眼(レセプター仮説)から見るのとではエライ違いであって、科学の心得のある人が虚心坦懐にデータを見れば福岡先生の主張の方がよりシンプルで分かりやすいと思うことでしょう。(ここで「オッカムの剃刀」を思い出して下さい。1つ実験結果が出てはアドホックな説明を要する仮説ほど、棄却されるべきなのです) 勿論「科学は自己修正過程」(Carl Sagan)なので、最終結論は先になるとは思いますが。
個人的感想ですが、たんぱく質の形状(folding)を決める原理がクリアになれば、プリオン説の滑稽さに気付けるかも、とも思いました。タンパク質の形状を決めるのは、全エネルギー極小化(平衡状態)という要素の他に、そのタンパク質が合成されるまでの履歴(時間軸)/kineticsも重要な因子な筈であって、その観点からプルシナーの実験(異常型プリオンタンパク質と正常型プリオンタンパク質を混合して、何とかして全て"異常型"だけに変える)を眺めると、何だか滑稽です(←そういう努力も必要ですが、報われなくても当然)。ほか、物理屋の私が読んでも、色んな意味で「頭の体操」になりました。科学者の卵にも一読を薦めます、論文を鵜呑みしない練習になります(笑)。