小さき者へ・生れ出づる悩み (新潮文庫)
佳品『小さき者へ』もよいが、『生まれ出づる悩み』の文章の素晴らしさ!!
こういうのを小説と言うのですな。
有島武郎には、最高傑作であり近代文学の大金字塔である『或る女』が聳え立っており、本書の2編はそれこそ「小さき者」ではあろうが、愛惜措く価わざる佳篇である。こういうのを読み直してみると、最近の多くの作家の短篇がただの作文に思えてくる。
有島のような文章が書けるのであれば、『生まれ出づる悩み』の藝術家的懊悩もまた味わってみたい・・・と思わせる。行け。勇んで。小さき者よ。
愛と死 (新潮文庫)
恋愛を人生の至上なものとしてとらえていた実篤の代表作。この作品を読めば如何に恋愛はすばらしくそして如何に失ったときの哀しさが大きいか、実篤の恋愛に対する考えが良く分かります。この本を読めば恋人がいる人は相手のことを愛おしく思うようになることでしょう。
ただ内容は少し単純すぎるような気がします。現実の恋に悩まされた方は一笑に付すかもしれないしまた物足りなく思うかもしれません。
友情 (新潮文庫)
真の友情とは何かについて考えさせられる作品でした.
自分は最初,大宮が野島を裏切ったと思いました.
でも,読みつづけていくにつれ,大宮が野島の気持ちに遠慮しつつも,
杉子を好きになってしまう気持ちにも共感せずにはいられませんでした.
大宮が野島のために杉子を好きにならなかったら,それは友情なのか?
そして,野島が大宮を許したら,それが友情なのか?
そんな疑問を持ちつつ,それらに対する自分の答えは否でした.
自分を絶対偽ることなく,それでも相手と向い合えること,
それが友情なのではないかと,この作品を読んで思う事が出来ました.