Clash
ピストルズのデビュー作「NEVER MIND THE BOLLOCKS」が、実は高度にプロデュースされた、ある意味コマーシャルな作品であったのに対し、このクラッシュの1作目は、商業主義などまったく無視した、「これぞパンク!」なDIY精神溢れるアルバムになっている。パンクロック史上において双璧を成すこの2作品ではあるが、その核心を的確に突いていたのは、むしろ本作であったと言えるであろう。
チープな音質と、お世辞にも上手いとは言い難い演奏、しかしながら、果敢に世のタブーに切り込んだリリックを吐き捨てるようにシャウトするジョーのVoや、ルーツミュージックの影響など微塵も感じさせないアグレッシヴな楽曲群が、そんなネガティヴな全ての要素を凌駕せしめる。・・・
問答無用のパワー&エナジーが、本作には漲り、そして横溢しているのだ。
ロックン・ロールが、ティーンズの心を揺さぶる初期衝動。
自分の周りにある全てのものに反抗し、暴れだしたくなる思春期の凶暴性。
このアルバムには、それらが満ち溢れている。
世の中を縛りつけている常識や道徳や法律といった柵から解き放たれ、自身の感性を白日の下に曝け出す。
1977年、ロンドンの若者達はこの時、その術を見出したのである。
Sex Pistols Retrospective: A Visual History
カラーのページは真ん中の4ページ程だけであるが、その他の大部分はモノクロ写真で各国のピストルズのレコードが多数掲載されている。2005年6月に発売された「DOOL」7月号増刊の「グレートコレクション」ほど内容は詳細ではないものの、なかなかお目にかかることができないレコードジャケットが多数載っており、コレクターは結構楽しめると思います。やはりカラー写真があまりないという点が少し残念ですが、購入して損はないと思います。
NO FUTURE : A SEX PISTOLS FILM (スタンダード・エディション) [DVD]
同じテンプル監督の「ロックンロール・スウィンドル」のサイドBに当たる作品と
感じました。
そちらをマルコムの「おれがピストルズのクリエイター」的ストーリーとするならば、
こちらはメンバーによるバンドとしてのリアリティのドキュメント。
或いはJ・ライドンの名著「Still a Punk」の映像版というべきか。
映像は過去に知っているものとかなりダブるけど、珍しいものも結構混じっており、
全体を通して、淡々と綴られるバンドのリアリティには見入るものがありました。
ただ観ていて悲しくなってしまい、楽しい気分とは程遠かったです。
シドを美化せず、悲しき単なる洋服馬鹿の単細胞(「Still a Punk」は輪を掛けて
そう言っているのだけど)として描いているところも映像となっているとまた悲しい。
あ、悪い映画とは言っていません。観て良かったです。
買ってから3回観ました。DVD。
とても満足しています。
追記:
「Still a Punk」を読まれていない方がいたら是非。
DVDもいいですが、比べるとこちらの方が私は好きです。
Never Mind the Bollocks Here's the Sex Pistols
ピストルズの一番の魅力は、ジョニー・ロットンの歌う歌だと思う。
僕は不良じゃなければパンクスでもない。
デカダンスへの憧れも別に無いが、このアルバムが大好きだ。
なぜなら、ここには僕を楽にしてくれる歌があるからだ。
しかしそれはメロディとかリリックとかをややこしく説明するようなレベルではなく、
口を可能な限りおっぴろげて、バカみたいな声で
「ア~~ィア~ムァ~ンナンチクライストォァッ!!!!!」
(I am an anti-Christ)
てな事を堂々と歌えることにたまらなく魅力を感じるからだ。
彼らはロック史上でも稀に見るくらいにバカなことをやったバンドだと思う。
しかし、本当にバカだったのではなく、完全に演じていたのだ。
ライドンにいたっては未だに・・・。
そして、そうすることによって、縮こまった世の中を笑い飛ばした。
そこにピストルズの存在意義があるように思う。
時に傍若無人に笑いながら、時にふざけてムセ返りながら、
しかし言いたい事全てをたった1枚のレコードで言い切ってしまうジョニー・ロットンの歌声に、
きっと何かを突き動かされるに違いない。
『ゴッド・セイヴ・ザ・クィーン』において繰り返される「No future」という言葉に、
僕は未来への希望を感じてしまうのだ。