生きるということ
「持つこと」は資本主義的体制(効率主義、利潤追求)への同調的な行動、「あること」はそうでないことと私は読みました。あるいは、そういった面を強調して読んだ、といったほうが正確かもしれません。
前半は、私の中にも多くの「持つ様式」が見られて、読むのが結構辛かったです。これ(自分の行動など)はどっちだろうか、と考えてしまいました。
後半は、どのような社会を目指せばよいのかというフロムの提言です。難しくても、より良い社会を目指していこうと言うフロムのヒューマニズム精神が伝わってきます。ここに書かれた提言が不可能に近いほど難しそうに見えるのは確かです。私が注目したのは、「年間保証収入」です。簡単に言ってしまえば、制度としてすべての人の生活を保障するという考えです。経済発展よりも人間を大切にしようと言う姿勢です。
このような提案からますます反対へ行っている様子を見ると、皮肉なことに、この本は時代を超えるということになるでしょう。
人が人を愛することのどうしようもなさ [DVD]
一言で言うなら圧巻、凄いに尽きる。
映画という独特のフィルムでなければ表現できない絵の迫力、存在感。
石井隆や佐々木原氏の「映画フィルム」であることへの執念を感じる。
そして名美と岡野のそれこそどうしようもない程の美しさ。
無様なまでに異様な形に見える根底にあるのはどうしようもない人間の純粋さ。
それが最後に人間の持つ複雑な感情全てを成し遂げて、ひとつだけポツンと残る。
純粋で不器用な魂だけがポツンと残る。
それがたまらなく愛おしい。
そのどうしようもない愛おしさに泣いた。
愛おしい映画です。
乳房
自分で自分を、歌詞よりも曲(リズム)を重視する人間だと思っていました。
が、年上の友達に勧められて聴いたこのアルバムで、
その認識をひっくり返されました。
私の行ったことのない土地や、経験したことのないことを歌っているはずなのに、
どの曲も情景が目に浮かんでくるのです。
決してずば抜けた歌唱力の持ち主ではないようですが、
その不安定さが絶妙で、歌詞が胸に染みます。
人間の土地 (新潮文庫)
この本を読んでから、長距離の飛行機がとても楽しくなった。特に夜、雲のない時はきれいな月や星、恐らくアジアの小都市だろう灯りなどを見ながらこの本を思い出してしまう。ぼくらはもっと空を飛ぶことに意識的になるべきだと思う。素晴らしい本です。
空高く飛び、人や街が豆粒みたいに見え、世界中にいける、ということはその時代、飛行士だけの世界だったと想像する。そこにはパラダイムの変換に近いものがあって、それが哲学的な思考に繋がっていくのではと思う。とにかく作者は空を飛ぶということにとても感動したのだろう。
この世の中で初めて空を飛ぶ、ということはどんなことかを感じさせてくれた。
愛するということ
愛とは対象が問題でないという言葉に、私達がおもっている愛という概念で読んだ人にまず思考を要求します。では、愛とは?フロムが言う愛とは態度を問題とします。技術であると。対象に心が開いているか、耳はかたむけ聴いているか?全存在を世界に開いているかということです。
また愛には処方箋がないという。マニュアルがないということですね。
そこで読者は途方にくれてしまう。
フロムは言います。あらゆる技術には訓練と知識が必要であると。
愛するための技術。
さて、その訓練とは?何をするのでしょうか?
それは読んでからの楽しみです。
私は今から20年以上前に読み、再読している価値のある一冊となっています。