クリスタルサイレンス〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)
2071年、開発が進む火星で、氷の中から謎の生物の死骸が大量に発見される。考古学者の卵の若い女性主人公は調査のため火星に向かう。企業や各国の思惑が入り乱れる火星で、次々怪異現象が。主人公に迫る危機、彼女を守ろうとする謎の存在。ジョジョに明かされていく火星の秘密。陰謀・・・。
あかん。読み始めたら、止まらなくなります。
未来のネットワーク上での戦い(ウイルス、ワクチン、アバター、人工生命)が、逃げる/争うが、リアルに表現豊かに描かれています。
読み応え、満点です。ここまで、未来のコンピュータやネットワークが克明に示された本は、はじめて読みました。
また、火星のリアルな世界での戦闘、戦闘員たち、兵器、ネットワークやコンピュータの進化、火星の開発の歴史、コンピュータはどれだけ人に近づけるか、進化したコンピュータと人類の関係等、読みどころばかりです。
筋も面白く、食事中も読み続ける面白さでした。上下巻揃えておいた方が無難です。
辺境生物探訪記 生命の本質を求めて (光文社新書)
新書としては珍しく分量のある、長沼毅さんと藤崎慎吾さんの対談。
テーマによってはゲストも参加しての鼎談となる。
また、各章末には、本文からの発展的な内容をコラム対談と称して収録する。
読み始めると分量はまったく気にならない。博覧強記な長沼さんの面白い話を引き出す、藤崎さんのリードが巧みなのだと思う。
次にはどんな面白い話が飛び出すのかと、どんどんページをめくってしまう。
サイエンスの話だけではなくて、お酒や温泉の話なども出てきて、目先が変わるのもよかったのだろう。
深海、砂漠、南極、温泉、地底などにいる生物、そして宇宙生命の可能性について縦横に語られていく。
なかでも印象に残ったのは第6章とエピローグで言及される宇宙生命の可能性だ。
もう少しくわしく知りたいと思っていたら生命の起源を宇宙に求めて―パンスペルミアの方舟 (DOJIN選書36)という、長沼さんの本が出ていた。
深海のパイロット (光文社新書)
本書は単なる解説本ではなく、実際に現場で起こったことを中心にまとめられていて、とても臨場感がある。まさに、「事件は現場で起こっている」ですね。新書にしては写真も多く効果的。
他の潜水艇やチームとのライバル意識とか、マニピュレータの更新など「しんかい」が成長していくさまとか、髪の毛一本挟まっただけで大変なことになるハッチを閉める描写とか、トイレの問題とか、初めて暴露された話題が相当盛り込まれている。
藤崎慎吾が取材したからここまで掘り下げられ、関係者も内情をさらけ出したといえる。
また、有人潜水船vs.無人機の論争も興味深い。有人潜水艇をとりまく環境がこれほど各国でも厳しいとは。毛利さん曰く、無人機は周囲情報をいったんフィルタをかけていることになるとのこと。本書を読めば、人間が現場の雰囲気を感じ取り、勘を発揮することの重要さがひしひしと伝わってくる。