ペルセポリス [12 inch Analog]
幻の音源が記念すべきアナログ盤での日本初発売に感謝!!
須永辰緒さんがDJの際、あちこちで回してくれたおかげです。
アルバム全編通して、壮大でとてもかっこよかったです♪
アレクサンドロスの征服と神話 (興亡の世界史)
アレクサンドロス関連の本では、最も理性的で視野が広く、斬新であって、なにより公平な書き方をされている、と感じたのがこの森谷さんでした。「オリュンピアス アレクサンドロス大王の母」はかなり面白かったですし。なのでもう少しアレクサンドロスの時代、できればその成立を含むフィリッポス'U世からアレクサンドロス'V世の死後の後継者戦争(ディアドコイ)を含んだもう少し大きく扱った本を探してみたらありました!良かったですし、とても詳しい本でした、さすがです。
まず、はじめにアレクサンドロス'V世の生涯が大河小説のような波乱万丈に満ちていて、大王の姿が様々に語られていてます。しかしアレクサンドロス'V世の像がひとつに収斂することが無い、という事実に対しての見解が素晴らしかったです。何故なら、アレクサンドロスのイメージは尽きず、後世の人々が自分にとってのアレクサンドロス像を投影した存在であることを。そして投影出来る様々な光と影を持ち得た稀有な人物であったことを。現存する大王伝のそのすべてが大王の死後300〜500年ほど経たローマ時代の作家(アッリアノスやプルタコスなど)が書いたものであり、そのローマ時代の著者たちは、アレクサンドロスの東征に参加した5〜6人の作家たち(アリストテレスの親戚カリステネスや後の後継者戦争にも参加する側近プトレマイオスなど)の作品でありこれはほぼ現存していない。つまり、大王伝自体が2重のフィルターが掛けられていることを自覚の後に、著者である森谷さん自身も時代的制約を感じつつ書いていることを文章にしているのは素晴らしいと感じました。
マケドニアにおけるフィリッポス'U世の存在も大変丁寧に記されていて、ここも個人的に評価が高いです。いかに革新的王であったのか、機を見て敏であり、その外交手段の徹底さ、そして後継者の育成に至るまで、この王の存在があったからこそのアレクサンドロスだと言えるとさえ私は思います。
何よりアレクサンドロス'V世の人柄を、大王伝の記述から推察するのではなく、そこに書かれている結果(例えば統治システムのめまぐるしい変化におけるアジアとの融和の部分と、結局のところマケドニア幹部を用いることになった経緯)から立ち上がる大王伝著者の感情を出来るだけ排除した考え方から見えてくるアレクサンドロスの人間像は、かなり斬新で新しい解釈であり、しかし強い説得威力を持っていると思いました。アジアとの融和を求めたのではなく、統治しやすい、アレクサンドロスにとって都合の良い選択の結果ではなかったのか?という解釈は、やはり推域の範囲を超えるものではありませんが、説得力あります。そういう可能性の話しではありますが、個人的に信じたい説、ということです(私も結局のところ自分の信じたい説を信じる、という部分ですが、いろいろ見た結果で、今判断するなら、という中腰力です)。
さらに、後継者戦争についての記述はやはりありがたかったです。マケドニア王家の断絶(アレクサンドロス'V世の血筋の消滅)を軸に、ペルディッカスが自ら招いた反ペルディッカス連合とも言えるべき状況の経緯に(と言っても、いずれ誰かが起こしたのでしょうけれどペルディッカスも戦術が無さすぎるような・・・)納得致しました。
アジアを軽視しつつ憧れをもっていたギリシア世界、そしてローマという帝国時代の作家たちというベールを出来るだけ排除しつつ読み解くアレクサンドロス'V世の世界、アレクサンドロス'V世に興味のある方にオススメ致します。
ペルセポリスII マルジ、故郷に帰る
少女の成長物語として、或いは外国人としての生活体験記として、共感できる内容があります。一方で、国王による上からの改革、革命イラン、戦争という特殊な社会を内部から描いた、貴重な情報をもたらしてくれます。しかもイラン人が書いた漫画ということで、様々な側面を持つ、得がたい作品となっていてお奨めです。
注意したいのは、作者はカージャル朝国王の血筋を引く、非常に特殊な環境に育った少女だという点です。祖父は首相を務め、父親は技術系会社員でありながらBBC放送を理解し、キャデラックを持ち、住み込みの家政婦がいます。作者はフランス語で教育をする学校に通い、革命後ウィーンに留学します。革命前は家族でスペイン旅行に出ています。
日本の読者が作者に共感しやすいのは、作者が欧米的価値観の家庭で育ったため、欧米的価値観の持ち主としてイラン社会を見ている点にあります。革命後のイランは、戦時中の日本の特高のような「革命防衛隊」に抑圧されているものとして描かれます。戦時日本や旧共産圏社会のような印象を受けるでしょう。問題は、多くの平均的なイラン人にとって、イラン社会が「同じように見えているのか」という点です。2005年の大統領選挙で保守派が圧勝したように、イラン人の多くは意外に革命後の政権を支持しています。革命前40%程度と言われた文盲率が80%に上昇し、義務教育が全土・全階級に行き届くようになったなど、民衆に支持されている面もあります。
マルジの家庭は、戦前日本の華族に比定できると言えます。国民所得が月100ドル程度の国で、自由に外国へいける人々は、民衆から妬まれる立場にあるわけです。本書を読むとき、このような側面もあることを考えつつ読むことも、大事かと思います。
ペルセポリス オリジナル・サウンドトラック
フランス製作のイラン映画『ペルセポリス』のサントラ。
オリエンタル風味を排除して、普通に情感豊かな劇伴になっているので
「イランぽさ」を期待していると面白みに欠けるかもしれませんが、
普遍的な音楽を目指した──これは監督の要望なんだそうです。
本編では意図的に「音痴」=「パワフル」に唄われていた『アイ・オブ・ザ・タイガー』(20曲目)ですが、
このサントラで聴くと、普通にフレンチポップで、すごく耳に馴染みます。
しっとりしていて、いい感じです。
オススメです!!!
ペルセポリス [DVD]
1970〜90年代にかけて、
革命と戦争で混乱する激動のイランを舞台に
監督自らの半生を綴った物語。
マルジの身の回りで起きる無情な現実。
革命運動によって自由を奪われてしまったイラン。
それでも、祖母の『公明正大』の言葉を胸に
母国の誇りを持っていた。
反抗心を胸に何事にも芯に突っ込んでゆくマルジ。
とある理由により、マルジはフランスへと留学。
留学先での生活・文化に溶け込もうと努力はするものの、
当時イランは戦争の真っただ中。
母国が混乱・戦時中という厳しい時代背景であるにも関わらず
母国を捨てきれない一心に胸が痛む場面も・・・。
コミカルで、剽軽で、胸に突き刺さる物語。