町長襲撃―産廃とテロに揺れた町
「市民」や行政の動きをしっかり書いてある。市民の努力や県のDQNな対応などはよくわかった。
しかし本書を「市民」の出す本と違う点を上げるとすれば産廃業者の言い分が入っていることだろう。ゴミを捨てるのであれば誰かが処分しなければならない。だから「悪貨が良貨を駆逐する」状況の中で奮闘する業者にはエールを送りたい。書いてある通りだったらね。
悪貨に舐められない行政というのを期待したいが・・・
襲われて―産廃の闇、自治の光
「産廃業は、もうかる商売である……その周りには利権の匂いにさとい魑魅魍魎(ちみもうりょう)たちが、まるで甘い蜜に群がるアリのように集まってくる」
この群がるアリは暴力も厭わない。13年前、柳川町長が産廃処分場に「待った」をかけて、暴漢に襲われ殺されかけた事件は、本当にショッキングだった。しかしその後は、うかつにもすっかり忘れたままだった。今、本書を読み、また暗たんたる気持ちになってしまった。まだ犯人は捕まっていず、やがて時効を迎えるという。
本書は、産廃処分場をめぐって町民、町議会、県、県警、産廃業者の動きを丹念に追った、元町長の手記である。ゴミの不法投棄や、リサイクルがらみの問題はよく耳にするが、いつもその背後に潜む巨大な闇の世界については、徹底追求した報道がなされないことに失望させられてきた。しかし本書は違う。そのタブーとされる領域に淡々とした筆致で踏み込んでいる。
ところで、町で最初に産廃反対運動を始めたのは若い母親たちだったという。無言電話や脅しにも屈せず行動を続けたという。やはり畏るべきものは、女性のひたむきなパワーだ。頭が上がらない。
鳩山首相は就任早々、温室効果ガスの「25%削減」を世界に宣言した。日本人としてぜひ実現させたい。が、おそらく、この対策のまわりにも、蜜を求めるアリが群がることだろう。女性のパワーばかりに頼ってはいられない。ぼくも省エネを心がけるところから始めよう。