生命保険のカラクリ (文春新書)
著者は米国のハーバードビジネススクールで学んだ
後、三年前から立ち上げ始めたインターネット専業生命
保険会社の副社長を務めるようになった人物である。
本書ではセイホ業界の慣行、姿勢、商品開発、営業
などに見られる問題にずばずばと切り込んでいる。
「業界に染まってしまう前に」書いてしまおうと思った
のだそうだ。実に賢明なことである。
曰く、旧来の生保は大量のセールスマン(レディ)を
抱えて彼らの口説き(義理人情プレゼント)に頼って
保険を売り込み、その扱い商品は人件費等の見合いで
実質手数料がひどく高額になっている。かかる実態を
隠すために保険会社は分かりにくい特約を多数付けて
消費者を目くらましにしてきた。保険料の不払いなどの
スキャンダルも、根本は消費者を見ずに自らの組織を
維持することに汲々とするから生じるのではないか。
しかし、このような消費者のためにならないビジネス
モデルは明らかに限界に来たはずだ。なぜなら著者らの
努力によって保険に使われないお金(付加保険料)が
法外に高額であることが白日の下に晒され、またこれを
嫌うならばネット生保や共済といった代替手段が末端の
消費者にも提供されるようになったのであるから。生命
保険の見直しを考えている方、内容がよく分からないままに
毎年保険の更新を続けている方、職場等で生保の勧誘を
受けて考慮中の方々などには是非一読をお勧めしたい。
本書は若くて優秀な経済人が高いモチベーションで
新しいビジネスを立ち上げつつあるその途中経過を
リアルタイムで読ませてくれるという点でも興味深い。
評者は著者と彼の会社の成功を切に祈る次第である。
社会の共助のためにという志がさらに磨かれんことも。
ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法
多くの事項を斬新な切り口で評している書。
特徴は、「そういう物の見方」もありましたか、という点。
この点は非常に斬新かつ大胆であり、ハッとさせられることが多い。
しかし、「さて、どうやって解決しますか、その問題?」に対する具体的な回答は少ないので、やや言いっ放しな感は否めない。
あと、物事を見る際の前提となる視点が、時たま偏っているのではないか、と思うところもある。
この点は、ブログで散見されるように、筆者の権力やヒエラルキーに対する過度な拒否姿勢の表れかもしれない。(筆者は、かつて村木厚労省局長を一方的に批判し、その後謝罪した過去がある。)
あと、筆者は「ゆるーく生きよう」と言いつつも、物事を斬る視点に立っているし、立ちたいと感じているようである。しかし、一方では、目標は低く等と言っているが、一体「ゆるーく」とは何なのか。
筆者自身、米国のMBAホルダーであり、外資系で働いた経験もあることから、この本を手に取る人間の ゆるーく と筆者の ゆる―く には、何やら温度差があるのではないか、と読了後思った次第である。
しかし、物事を斬新に捉える筆者の視点には☆3つをあげずにはいられないであろう。
今後を期待する。