キーシン・プレイズ・ショパン~RCA Red Seal全ショパン録音集成
入手して、まず聴いたのは二枚目のソナタ三番です。七十年代のギレリス(私は凄い好きなんですね)の名演と聴き較べたくて… ってかアプローチが似ている部分が有りますね。キーシンの方が表現の幅が圧倒的に広いのに驚かされました、何だかギレリスがただ力任せに打鍵している様な感すらした。おまけに最後に拍手が入ってたんでビックリ!ライブだったんだね、感極まりブラボー!って叫んだ人の気持ちが凄い解る。それにしては各楽章のインターバルが一様でなくよく考えられた演奏だなと… 当時の年齢考えると凄いとしか言い様が無いね。
五枚を聴き通して… ライブ録音はショパンの音楽の深みから音を手掴みで取り出したような生々しさを感じました。録音もビリー・ジョエルが絶賛した名器と自然な残響で素晴らしいですね… ほとんどの巨匠(クラシックに限らず)がカーネギーでライブ録音するのが解ります。
スタジオ録音では、より思索的、内省的で、単なるリリシズムではない深い内面、精神性を感じますね… アファナシエフに近いと言って言い過ぎじゃないくらいです。録音は残念ながらライブの方が良い、残響が気になるね。
私の感想ではキーシンは考え込み過ぎるきらいがあるので… 一発勝負のライブ録音が向いてる気がしました… まあー、スタジオよりライブが良いピアニストは、私の中ではビル・エバンスくらいでしょうか… 深い精神性と言う点では共通してます。
ショパンイヤーに相応しい質の高い内容の有る全集でした。
ムソルグスキー:展覧会の絵
もちろん「展覧会の絵」が目当てで聴いたのですが、バッハの「トッカータ,アダージョとフーガ」もグリンカの「ひばり」も本当に見事です。
バッハ作品は、低音の完璧な構造が素晴らしいと同時に、崇高な高音が印象的です。一転して「ひばり」は、抒情的な究極の美しさで涙を誘います。当然のことながら「展覧会の絵」は大迫力であると同時に繊細で、イマジネーションの世界を豊かに広げてくれます。
ライナーノーツのコメントに一言。バッハとムソルグスキーの間に「ちょっと一息」的に入っているように書かれていた小品の「ひばり」ですが、こんなに美しい演奏を聴きながら一息つける人なんているんでしょうかね。
聴く側の心(の深い部分)をつかんで離さないキーシンのピアノでした。星5個では足りません。
世紀のピアニストたちの共演~ヴェルビエ音楽祭&アカデミー10周年記念ガラ・コンサート・ライヴ [DVD]
キーシン、アルゲリッチ、プレトニョフ、アンスネス、レヴァイン、アックス…。
世界的なピアニスト、そしてバイオリニストが共演する「ヴェルビエ音楽祭」の一部始終がこのDVDに収められている。
8台のピアノをステージ上に並べ、「ワルキューレの騎行」「星条旗よ永遠慣れ」を演奏するのは圧巻。
その中でもチャイコフスキーコンクールで優勝した若手中国人ピアニスト「ラン・ラン」の紫色のチャイナ服がとても目立って、東洋の存在をアピールしていた。
キーシンとアルゲリッチの連弾は、息を飲んだ。
ベテランのアルゲリッチがキーシン坊やの横顔を睨みながら演奏するところなど。
キーシンの冷汗とアルゲリッチの鬼の形相が、演奏後、みごとビッグスマイルに変わるところは微笑ましい。
バイオリン&ビオラ&チェロの協奏での『ハッピバースデー変奏曲』は、涙もの。
どこか田中真紀子に似ているサラ・チャンはノリノリで、
この場をとことん盛り上げてくれたと思う。
個人活動の多いアーティストが、このように「もともと音楽はこう楽しむもの」と、自らがはじけている姿に嬉しくなった。
音楽の贈り物~エフゲニー・キーシン・ドキュメンタリー [DVD]
CDでは数え切れないほど聴いた曲を「観ること」でこれほど感動するものなのですね。外見的にはそこいらにいる若者。でも彼がスタインウェイの前に座った途端に驚愕の世界が出現します。
キーシンの才能についてはもはや私が語るのも野暮な話。しかしリストをバイエルのように軽々と弾き、また、ピアノをやる人なら誰でも弾けるベートーベンのトルコ行進曲を誰にも弾けない演奏で魅せる、等々観ていて鳥肌が立ちました。このクライマックスのロンドン・プロムスは圧巻ですね。
コンサートに行ってもなかなか観ることの出来ない手のアップ、鍵盤の叩き方、手首の柔らかさ、爪の状態、上半身のポジショニングなども、ピアノを練習する人々に非常に参考になります。
また、決して気取らない気さくな人柄、左手をピアノについて行うぎこちないおじぎを見て、キーシンがほんの少しだけ身近な人になったような気がしました。
クラシックファンの方、ピアノをなさる方にとって必見のDVDであると思います。