The Complete Recordings
あっちのフェラ盤を購入したり、こっちのフェラ盤を聴いてみたり、トリビュート盤を漁ってみたり、どこから手を付けて良いのか分からなかったフェラの全作品が揃いました。こんなに多数のフェラ盤があったのかと今更ながら驚きと感激と相半ばなのではあります。
まず、「リマスター」と銘打ってあったのでためしに手持ち盤とのサウンド比較のため、ライブ盤の『J.J.D』を早速かけてみました。同じ曲でも以前聞こえなかった楽器が聞こえているではありませんか! かなり音がクリアーになっています。これはかなり良いリマスターだと思いました。
難をいえば……、『J.J.D』(気に入っていた曲)ラスト部分、フェラがエレピを弾きながら「Thank you! Brother and sister. see you…』と喋るところがよく聴こえなくなってしまっているのは残念です。
手持ちのフェラ盤があったとしても以前の盤と比較するこういう楽しみ方もありかなと思います。
27枚目のDVDはフェラの人となりを語る感動的ドキュメンタリーです。
MUSIC MAGAZINE増刊 クロス・レヴュー 1981-1989
企画の勝利。ミュージックマガジンの読者であれば手にとって損のない一冊。この企画は同誌でなければできないのに、何故いままでやらなかったんだろうと思ったが、編集後記を読むと立案者は若手社員だそうだ。長い間同誌にかかわる人にとっては、恥ずかしい過去?が知られてしまう企画だから尻込みしていたのかもしれないなと思うと何だか可笑しくなった。
情報紙として読む。音楽批評誌として読む。ミュージックマガジンの定期購読者が同誌に何を求めているのかは様々だと思う。筆者は90年からの定期購読者だが、ここ数年は、情報を求めることに重心をおいて読んでいるような気がするので、ミュージックマガジン的には不真面目な読者だ。
で、そんな自分が毎月楽しみにしているのが、クロスレビューをはじめとする新譜のレビューだ。アルバムを点数化するという批評方法の是非は別にして、やはりこの方法はおもしろい。
前述のとおり、筆者は90年からの読者なので、中村とうよう氏のワールドミュージック以外のレビューを読んだのは、本書がほぼ初めて(それもまとめて)なのだが、好き嫌いは別にして、彼のレビューが一番おもしろかった。
本書には「クロスレビューと私」というタイトルで、評者・ミュージシャン・レコード会社というそれぞれの立場でクロスレビューにかかわった7名が文章を寄せている。これが非常に興味深い内容なのだが、その中で、原田尊志氏の次の文章が印象に残った。
「好き嫌いという生理に密着しながら音楽を語り、しかも世界なり時代なりの広がりを同時に語る。どちらかを優先することができるが、どちらも不可分に両立させること。そんな至難の業を、ある意味エンターテインメント?痛快な語り口で楽しませてくれた「クロスレビュー」のとうようさんだった訳だ。」
正直、筆者はとうよう氏の文章は苦手だ。しかし、例えば索引で自分の好きなミュージシャンを探しながらレビューを読むとき、最初に読むのは最下段に書かれている氏のレビューだった。
貶されてしまったミュージシャンにとってはたまらないが、レビューの読み手にとっては、好き嫌いは別にして氏のレビューは“芸(エンターテインメント)”としておもしろかったのである。
ザ・ベスト・オブ・フェラ・クティ<デラックス・サウンド+ヴィジョン> [DVD]
私は彼の音楽はほとんど聴いていなかったので、今回これをお試しとして購入した。CDの選曲は彼の息子であり自身ミュージシャンであるフェミ・クティが行っているようだし、いわゆる「代表曲」が多いようだからいいのだが、英文ライナー(これはこれで悪くはないが)の和訳しかついていず、日本独自の、各曲の出典や彼のバイオグラフィー等について触れた解説がないのは残念。DVDに日本語字幕がないのも、彼のようなミュージシャンの魅力を伝えるためには不十分といわざるを得ない。字幕がなければ、彼のそれなりのファンがDVD目当てにこれを買う、ということもないだろうし。つまり、商品としては中途半端との印象を持ってしまう。これを聴いていいなと思っても、オリジナル・アルバムの日本盤は数年前の再発が店頭から姿を消して以降、手に入りにくくなっているし(それとも、これの売れ行きによって再発を考えてくれているのだろうか)...。もう少し頑張ってほしかった。もっとも、これらのことは、ここに収められた彼の音楽や生きざまの圧倒的パワーとは全く関係のないことではありますが。
フェラ・イン・コンサート [DVD]
Fela Kutiの凄みのある顔でバックメンバーに指示を出しながらサックス、オルガンを弾きまくる。一見の価値があります。もっとたっぷり見たい。フルコンサートのDVDを出してください。