玉木宏樹の大冗談音楽会!!
玉木さんは日本の人だから、”ウィアード”アル・ヤンコビックのように英語がわからないと冗談もわからない、ってことはありません。まして、玉木さんは「しゃべるバイオリン」を奏でる超絶技巧のユニークなバイオリニストでもあります。だから、ユーモアとアイデアは満載です。
でも、いまいち笑えませんでした。確かに幾つか面白い曲もあります。レビューにある6曲目は面白かったです。4曲目もばかばかしかった。でも、それで終わっちゃいました。ゲラゲラでもクスクスでもなく、アハハという乾いた笑い。そして沈黙。
ただ単に玉木さんと私のユーモアのセンスが合わないだけかもしれません。でも間違いないのは、人を笑わせるにはパンチが足りないこと。これはみんな共通の感想だと思います。スパイク・ジョーンズやシティー・スリッカーズ、クレイジー・キャッツのようなジャズメンとは違った笑い。クラシック畑の笑いはちょっと敷居が高いのかもしれませんね。
救いは、5曲目「バイオリンのための大江戸捜査網」。時代劇ファンは必聴ですよ。ホルンを軸にした、あの雄大な曲がバイオリンで奏でられるとどうなるか。これは聴いてのお楽しみ。いずれにせよ、マニア向けです。本当に冗談音楽は難しい・・・。
オレたち花のバブル組 (文春文庫)
池井戸潤氏の名前は知っていたが読んだことはなかった。初めて手にした本書は非常に面白く満足できた。題名から横田濱夫氏的銀行小説かとたかをくくっていたら全く違う。江上剛氏が描く銀行トップの抗争や反社とは違う。高任和夫氏の描く50歳前後の窓際族行員の悲哀と喜びとも違う。現実に銀行内にある話が緊迫感もって展開され、内容は正しいし、中堅行員となった入行同期の連携、活躍が素晴らしい。本書はバブルで空前の大量採用時代の行員同期の話で、出世コースに乗った者、脱落してしまった者、勧善懲悪の頼るになる同期がいる、持ち場持ち場で支援する同期がいる、そのバブル入行組の活躍が清々しくもあり、行内での力関係や人間関係がおどろおどろする。「東京中央銀行」は旧産業中央銀行と旧東京第一銀行が合併し、ご他聞にもれず「Tだ、Sだ」と摩擦は大きい。主役の営業第二部の半沢次長、法人部の時枝調査役、半沢への協力者の渡真利、システム部から取引先企業へ外部出向第一号の近藤等々の同期が、行内の不審な動きの解明に或いは金融庁検査対応に、結束強く協働して当たる。
所管部移管がなされた「伊勢島ホテル」の巨額投資損失事件と、近藤が出向先の「タミヤ電機」の浮き貸し事件や粉飾決算をめぐり、そこに金融庁検査、特に銀行いじめの悪名高い検査官が加わり、各担当部、関連部が非常に難しい対応を迫られる。しかも読者と等身大の日常の銀行内また取引先とのせめぎあいだ。特に早々と外部出向となった近藤は、行員受け皿として銀行に恩を売り利用したい社長であり、よくありがちな出向・転籍劇であり、軋轢が生じ居心地は悪くなり、銀行に戻るケースが実際に多い中、近藤は不透明な財務経理の解明に社内で孤軍奮闘頑張る。半沢と金融庁黒崎、近藤とタミヤ電機社長、これらのバトルも読みどころである。昭和40年以前の入行者、昭和44年から48年位の入行の団塊世代、そしてバブル入行組、それぞれの社会経済背景や組織の中での巡り合わせで、悲喜こもごもの行員人生である。ただ時代の順番に給与、退職金、企業年金基金等の経済的なメリットが少なくなってきたことは確かであろう。
徳利長屋の怪 名探偵夢水清志郎事件ノート外伝 大江戸編 下巻 (講談社青い鳥文庫)
著者の作品は
児童書であろうと決して手抜きを
しないというところが大きな特徴です。
なので、この作品は大人でも、子供でも
十二分に楽しむことができます。
今回は外伝の下巻です。
今回の最初の事件は
どこかで見たことのある人物が
事件を起こします。
そう、知っている人はこの本とは別の世界で
この人物に似た人がいるのを
ご存知ですよね。
このトリックは
一見すると凝っているように見える
かと思われますが
実はかなり単純なもの。
これはメインの事件となる
「江戸城の消失事件」でも
いえることなんです。
つまり大きなことを
やると思うとかんぐってしまって
足元にある単純なことに
気づかなくなってしまうのです。
著者は児童書ながら
その手法を使っているので
本当、すごいなと思います。
それと謎解きが
すごいばかりではありません。
ちゃんと歴史読み物として
きちんとしたことも書いているのです。
そう、国民の心理をです。
これは二つの事件のどちらの真相にも
そういう真理について書かれていて
すごくよくできているな、と感じました。
それでいてラストの
描写はちゃんと意味のわかる人には
ちょっと待った!!と笑いをくれるのです。
本当、よく練られている作品です。
こういう児童書って
大切なものです。
株価暴落 (文春文庫)
企業テロの標的となった巨大スーパーやそれを支援する銀行といった利害関係者の視点、そして連続爆破事件の容疑者とそれを追う警察の視点など、
次々に起こる事件や社内抗争が、暴落していく「株価」を軸にそれぞれの視点で見事に描写されており、ハラハラしながら一気に読んでしまいました。
金融エンタテイメントとしても推理小説としても秀逸の作品だと思います。