似ない者夫婦
「似た者夫婦」という言葉がありますが、この本の題は「似ない者夫婦」。本書に収められているエッセイのひとつの題名からとったものです。編集者の薦めでこの題に決まったようですが、著者は最初は抵抗していた様子です(p.186)。
「私のルーツ」「書斎の窓」「日々の感慨」「折にふれて」の4部構成で、45本のエッセイが並んでいます。肩に力を入れないで書いているので、普段着の著者がそこに居ます。
眼の病気(網膜中心静脈閉塞症)の一大事件の発端とその後の経緯を書き留めた「眼」「緊急事態」が強烈でした。ひとごととは思えません。大原富枝さん、瀬戸内寂聴さん、佐藤愛子さん、芝木好子さんらとの交流を綴った作品も興味深く読みました。
出身県の福井、家族のこと、夫である吉村昭さんのこと、高村光太郎と智恵子のこと奈良岡さんの舞台のこと、オペレッタ「微笑みの国」のハンガリー公演のこと、飼っていた犬のことなど,どのエッセイもさりげなく書かれていますが品格のある人柄が出ているように思う。
遍路みち
遍路みちは短編集ですが、全て、津村氏の体験に基づいています。
夫との生活、療養、看病、そして死
ご夫婦共に作家ですから、普通のご家庭とは違います。
でも、悲しみはどこでも同じですね。
ガンで死ぬ逝く人は、死と対峙しつつ生きる時間があります。
それもつらいことでしょうが、それを見守っている家族も辛いですね。
亡くなったら、本人はもはや何も感じることができないわけですが、
残された家族は、日々悲嘆と向き合って生きていかなければなりません。
そして、悲嘆から少しずつ立ち直っていく、
死と悲嘆を考える良い機会になりました。