御宿かわせみ選集 第一集 [DVD]
「御宿かわせみ」と言えば、もう20年以上にわたり多くのファンを持つ平岩弓枝さんの作品です。元は八丁堀の鬼と呼ばれた同心の娘で、今は大川端のかわせみと言う小さな宿の女主人をしている「るい」と、その幼馴染で与力の弟「東吾」。このふたりの切ないながらも一途な恋を縦糸に「かわせみ」に纏わる様々な人たちが巻き起こす事件を織り込みながら、江戸の情緒を紡ぎだす作品です。「御宿かわせみ」も幾人かの方々に演じられて来ましたが、連続物としては初代にあたるこの作品は、原作に忠実に、実に丁寧に作られた作品として多くのかわせみファンの間でも評判の高い物です。中でも一番人気の「江戸の子守唄」の入った第一集 は必見に値します。今は亡きハナ肇さんが娘を思う父の愛を演じた「秋の蛍」も入っており是非お勧めいたします。
NHK大河ドラマ総集編DVDシリーズ 新・平家物語
若き日の仲代達矢扮する平清盛の乾坤一擲の気迫と、斜陽化してからの、やることなすことすべてが裏目に出るという閉塞状態が、子供心にも、強烈に焼き付いている作品だが、残念ながら、ここにあるのは総集編であり、当時は、総集編の作り方も未熟であったのか雑であったのか、所々、わかりにくい部分があり、特に、人間模様などの、説明が必要とされる部分でそれが顕著であるようである。
ところで、この作品を見ていて、ふと、思ったのだが、「平家は頼朝を助けたばかりに頼朝によって滅ぼされてしまった」という、巷間言われる「情けが仇」の見本のような話があるが、清盛が源氏の幼子を助けたというのは、決して間違った判断ではなかったのではないか?
なぜなら、保元・平治の乱という熾烈な権力闘争の後、人々は新しく権力者として登場してきた「武士」という武力を持った新興階級に対し、著しい不安感を持っていたと思われ、遺児らを助けることは、まずは、それら不安感の払拭に効果があったと思うからである。
(現に、清盛死後、平家を都から追ったのは、頼朝でも義経でもなく木曽義仲なのである。)
もっとも、ここまではいいとして、私が疑問に思うのは、なぜ源氏の嫡男を伊豆へなどなど流したのか?ということである。
関東は元々、源氏の地盤であり、今は平家に靡いているとはいえ、湿った火薬庫に火の気を投げ込むようなものではなかったか?
私なら、頼朝は京に留め置き、貴族制に代わる武家政権の樹立という源平共通の利害目的を掲げ、その上で、一門の娘をあてがい、平家一門(武家側と言い換えてもいいかと)に取り込む。
それができないのなら、せめて、源氏の基盤である東国ではなく、平家の基盤である西国へ流すべきだったのではないか。
清盛も、まさか「伊豆」と「伊予」を間違ったわけでもないだろうが、何とも腑に落ちぬ選択である。
花世の立春―新・御宿かわせみ
はねっかえりのわがまま娘の花世がとつぜん源太郎に愛を告白、二人はあわただしく立春の日に盃事をすませます。まずは祝着ですが、花世にはやりこめられてばかりの源太郎、これからが正念場です。花世はお嬢様育ちで家事はまるでダメですが、かわせみで料理を実習するなど、かわいいところもあります。二人の周りには、長助、嘉助、お吉など昔気質の応援団が健在ですから、何とかやってゆけるでしょう。
るいの凛とした立ち居振る舞いは相変わらずです。人一倍やきもち焼きだったるいですが、麻太郎に対しては、東吾の在りし日の面影を重ねて見ているのか、あくまでやさしい叔母として接しています。麻太郎は、容貌、しぐさ、おおらかな性格が実父そっくり、その出生の秘密はいまや公然の秘密です。医師として将来を嘱望され、若いのに人情の機微に通じ、人柄も申し分のない麻太郎ですが、東吾と違って意中の人がいないのが気になります。千春の危難を救うためには、どんな危険も顧みない頼もしい兄ですが、そろそろいい人にめぐりあってほしいと思います。
千姫様 (角川文庫)
女流作家が歴史物を書く場合、例外なく女性が主人公になる。本作もその例に漏れず千姫がヒロインである。しかし、千姫ほどの有名人になると作者独自の解釈を入れるのは難しい。その生涯が記録に残っているからである。しかし、作者は架空のお付のもの三帆を登場させ、千姫の描写に幅を持たせている。
千姫は家康の策略で秀吉の遺児秀頼の所へ嫁ぐ。しかし、家康は大坂城攻めを決行する。だが、家康の事、千姫は三帆と共に助け出される。ここからが千姫の第二の人生だが、"おふく"との係りあいなどを通じ、徳川家の揺籃時代を裏側から支える役目を果たす。秀頼脱出説なども採り上げるが、言い古された説なので目新しさはない。それよりも、千姫を中心とした女性達の木目細やかな描写が本作の持ち味であろう。また、文章が平易なので親しみ易い点が特徴である。
千姫という波乱に富んだ人生を送った女性を中心に、徳川揺籃期の女性達の人間模様を平易に描いた作品。
新・御宿かわせみ (文春文庫)
旧かわせみの主人公であった二人が不慮の事故と事件で二人共登場しないかわせみ。なんとも寂しい展開である。新作との間に多くの人が刃に掛かる悲しい事件が勃発し、短編で完結しながら、解決に向けひとつの流れが出来ている為、いささか説明的な感もあるがやっぱりうまい。旧作と比較して、次世代の若さが青臭さとも感じられるのは、こちらも年を取った為か?
これからの若人の恋の展開は?そして、東吾は?と自作に期待感を抱かせるが、思わず、旧かわせみを読み返して、江戸情緒の良さを再確認する本作でした。