顔のない女
組織の殺し屋 vs. 殺し屋専門の殺し屋“顔のない女”の戦いを描いた連作短篇集。
一にも二にも、本書の主役“顔のない女”の造形が強烈。そして、とても魅力的。この作者ならではのやわらかな身体の描線とともに、“顔のない女”がかぶる大きな黒い帽子(チェスタトンのブラウン神父の帽子にちょっと似てるかも)と、蠱惑的な笑みを浮かべる口の描写が、実にいいですね。これからの悪夢にきっと出てくるんじゃないかっていう、ぞくっとする、ミステリアスな魅力に満ちていて。
初出は、『ミステリマガジン』の2010年1月号〜12月号に連載された十二篇に、描き下ろしの一篇を加えたもの。「影男」「歌い手(シンガー)」「電気男(エレキ・マン)と液体男(ウオーター・マン)」「キラー・ピエロ」「年盗み(ユース・テイカー)」「人形使い(パペット・マスター)」「スネーク」「ハーピー」「モンスター・メイカー」「ドリーム・キャッチャー」「顔のない男」「BAR・顔なし(フェイスレス)」+「召喚者(サマナー)」。
とりわけ気に入ったのは、“星の王子さま”を模した扉絵の雰囲気からわくわくさせられた「ドリーム・キャッチャー」、“顔のない女”の素顔はメガトン爆弾・タイフーン級の可愛さに違いないと確信した「顔のない男」、この二篇。
もののけ草紙(3)(ぶんか社コミックス)
実は、最後に収録されている「ぱらいそ」を雑誌掲載時に読んで、
「なんか決まりきったパターンでつまらない・・・」と、思ってしまいました。
しかし、今回単行本になり、続けて読んだところ、全体の流れがここで生かされて
私の中でとても余韻のある、いい話に変わったのです。
夢幻紳士シリーズも、スピンオフのこのお話も、続けて、まとめて楽しむのをオススメします。