ランニング・オン・エンプティ [DVD]
アムモは低予算ながら、胸に響く作品を送り出している。
本作も小田社長自らの原案によるものらしいが、若手の監督をどんどん輩出する姿勢は素晴らしい。
内容はフリーターの恋人同士の痴話げんかがもとで起こる「狂言誘拐」を描いたもので、後半はそこに
異母兄妹の要素なども絡んで来る。
彼氏役の小林且弥のいいかげんさが絶妙で、いい感じの「ふ抜けた」(誉めてます)出来になっている。
彼女役にして、本騒動の張本人であるみひろがまた素晴らしい。
「サイタマノラッパー」での好演が小田社長の目に留まったということだが、男性目線からすれば
たまらない魅力を醸し出していた。同性から観ると、大嫌いなタイプだと思うけれど(笑)。
舞台挨拶で「男たちを手玉に取る小悪魔」と言っていたが、手玉に「取る」のではなく、いつのまにか
「取られている」のだ。この演技力は一般映画でも十分通用するはずだ。
川崎の工業地帯でロケされているが、低予算かつ1週間で撮られたとは思えない「質感」もある。
これはブレランのような近未来的風景と、狭ーいアパートの一室を対比させている「絵」の完成度もあるだろう。
特別出演の大杉漣、菅田俊らの存在感も質感向上に大きな力となった。
ラストシーンはちょっと重くて難解だけど、全体的にはコメディ作品と見ていいだろう。
特典映像は15分ほどの舞台挨拶が収録されている。星は4つです。
キャタピラー [DVD]
★この「キャタピラー」はドルトン・トランボ監督屈指の名作、『ジョニーは戦場へ行った』を彷彿とさせる反戦映画の衝撃作。題材的に作風の趣向はかなり異なるが、接点はある。物語の説明は他のレビュー様がわかりやすく紹介されておられるので省きますが、日本映画では久々に残酷と形容してもいい、鬼気迫る、本物の作品に出会えた。観る者の五感と心理を激しく揺さぶる、回想=(フラッシュバック)を多用した、特性な映像表現と妥協なしの悲痛なムードが戦争の悲惨さや苦悩、人間性のあるまじき異常な不条理を静かに訴える。単刀直入に言って、観るのがイヤになるほどインモラルなつくり方だが、決して眼を背けてはならない。戦争とは〈地獄〉である!★。