「はやぶさ」からの贈り物―全記録・小惑星イトカワの砂が明かす地球誕生の秘密
失礼ながら予想に反して素晴らしい内容でした。
朝日新聞一面を飾ったあの美しい写真が口絵を飾ります。
その写真を撮影した東山記者のオーストラリア報告から本書は始まります。
内容は、川口先生や的川先生の書とは異なり、ISAS(JAXA)の外から見た「はやぶさ」の記録になります。
基本的には当時我々も知りえた情報がメインとなります。
ただ、新聞社だけあって、他に見られない写真がたくさんあります(全てカラー!!)
事実を丁寧に追っており、たとえば最初のタッチダウンの時、川口先生がスーパーバイザーの矢野先生に「ひとりで考えてみて」と言ったエピソードがちゃんと語られているのはうれしい。
二度目のタッチダウン後、川口先生が
「もう一回やるか!」
そうそう、川口プロマネって当時はそんなイメージだったよなあとか。
(そして「みなさんそれが心配なんですよね」と的川先生がフォローした話は、的川先生の本参照)
イオンエンジン停止後、分析チームに謝って回ったという話は、私にとっては初出でした。
朝日新聞とは思えない素晴らしい内容なのだが、それでもどうしてもそちこちで朝日らしさが滲み出てしまうのが悲しい。
まずサブタイトル「全記録・小惑星イトカワの砂が明かす地球誕生の秘密」
全記録ってほどでもないし、もちろん地球誕生の秘密などこれっぽっちも書かれていない。
こういう「見出し」でアオる手法がなんとも、朝日のスクープ体質を物語ってしまう。
固体エンジンの M-V ロケットの技術はミサイルに転用可能!!
再突入の精密誘導は、核兵器にも転用可能!!
などなどお決まりの「軍靴の音が聞こえる」節。
(打ち上げに○○億円かかった、の一言も忘れない)
そんでデスク自ら「微粒子発見のスクープをものにした!!」などと、スクープ体質丸出しの自画自賛。
電話攻勢って現場にとっては迷惑だから。
そんなこんなが★ひとつ減らした理由。
でもお勧めです。
今ではやさしいお父さんイメージの川口PMですが、当時のクールなスーパーエンジニアっぷりが描かれています。
※初出で「ビーコン診断」を朝日の捏造と書きましたが、レビューアの誤認識でした。謹んで訂正お詫び申し上げます。
はやぶさ君の冒険
2003年に地球を離れ、数々のトラブルに見舞われながらも7年以上もの月日をかけて帰還した、小惑星探査機「はやぶさ」。
彼の出発からイトカワへの到着、そして再び地球へ向けて旅をする、その道のりを辿るカードゲームです。
ゲームシステムは、プレイヤー同士で相談してクリアを目指す協力型です。
一般的な対戦カードゲームと違った感覚は賛否が分かれるところかも知れません。
説明書の書き方がやや分かりにくく、手順を覚えてスムーズに遊べるまで時間がかかりました。
まずルールを理解するために何度かプレイ、という感じで最低難易度で試してみましたが、特に感慨も無く、
カードの効果や出て来る単語もなんだかよく分からない印象があり、危うくお蔵入りするところでした。
ですがカード下部のフレーバーテキストを全て読み終えたとき、考え方はガラリと変わりました。
はやぶさが体験した数々の困難、その困難に立ち向かうべく練られた策、それらがダイレクトに心に響いてくるのです。
ゲームとして楽しむというよりも、はやぶさの歴史を読み、彼を回想し、
それに付随して疑似体験的に「クリアを目指す」というゲームの形態があるように感じました。
ただゲームとして遊ぶのではなく、はやぶさとそのプロジェクトに関わった技術者たちに思いを馳せる、
そんなとても良いファンアイテムではないでしょうか。
小惑星探査機 はやぶさの大冒険
科学・宇宙ファンでなくとも、一気に読める楽しさがあります。
「小惑星探査機」、「工学実験探査機」の「はやぶさ」が
関係者のどのような関与、願い、熱意、努力によって
運行を支えられていたかを、興味深く追体験できます。
山根一眞さんの筆者あとがきにあるように
「中学生でも理解できる本」を目指して
わかりやすく読めるよう随所に工夫がしてあります。
カタカナや英字、数字が多いことを考えると、
普通なら横書きでもおかしくないのに、縦書きで組んであるところが秀逸。
バランス良い章立てで、絵巻物のように読み進めることができます。
小口のそばに「はやぶさ」の小さなイラストが少しずつ位置を変えて描かれており、
着陸の様子をパラパラ漫画のように楽しめるの工夫もさすが。
もちろんマニアが読めば物足りない面もあるでしょうが、
話の交通整理がしてあることと、
読み易くまとまっていることを考慮して☆5つとしました。
鮫島有美子「ディスカヴァー2000」(7) 白い花の咲く頃
鮫島有美子さんの歌い方を批評するだけの見識はありません。しかし、彼女の歌を聴いていると、美しい日本語の発音がとても耳に残ります。古き良き時代、現代語である日本語が、鮫島有美子さんの歌になると、格調が備わります。彼女の歌そのものも楽しめますが、美しい日本語を忘れないためにも、はきはきした歯切れのよい日本語の歌をみなさん鑑賞してみませんか?