ウズベキスタンの桜
女学生の感性が地の文章として基底にあり、他方においては政治家としての遠慮がちな発言が誰をも傷つけることのない善意に溢れた書物を作り上げている。ただ駐ウズベキスタンの特命全権大使時代に深く関与した1999年の日本人拉致事件に関してだけは例外的に日本外務省の尊大としか言いようのない対応を婉曲、間接的に批判している。よほど腹に据えかねたものと受け取ってよいだろう。
外交官としての視点が忘れられていないのは当然ながら、実際にはむしろウズベキスタンの一般庶民の生活、あるいは彼らとの交流を描いた文章の方にはるかに精彩がある。それこそが著者がもっとも読者に伝えたい主題であったろうと思われる。タシケントの舞台芸術劇場は戦後ソ連に抑留された日本人の労働によって建設された。この劇場と日本人墓地をめぐる話題は読者の心を揺さぶらずにはおかない。
私は短い期間ウズベキスタンを訪れる機会をもったがその僅かな見聞は著者が描くウズベク人の姿にすっかり重なり合うものであった。欧米世界に注目するあまりわれわれが忘れ去ってしまった「もう一つの」世のあり方を思い起こさせてくれる人たちがそこにいた。ウズベキスタンの都市はシルクロードの衰退とともに繁栄から見放された。その繁栄時代は今でも人々の心を引きつける多くの文化遺産として残されている。本書に盛り込まれた数多い写真もこの国への共感にあふれた本文と相まって存分に目も楽しませてくれる。これに歴史についての解説が加わりさえすれば鬼に金棒と思わせるウズベキスタン案内書である。
UFO少年アブドラジャン [DVD]
ハリウッド型の大スペクタクル映画に食傷ぎみだったところへ、この映画はとても心にしみた。
括りとしては一応SFになるのだろう。
コメディーと捉えることも可能なのかもしれない。
私としては、「ヒューマンドラマ」と呼びたいところだが、
何せ、主人公が異星人なだけに、「ヒューマン」とは言いがたく、……く、苦しい。
ともかく、テーマは家族愛、隣人愛、人間愛(異星人も含めて♪)、だと思う。
人の心の機微とか、人情とかは、けっこう普遍的なものなのだと痛感。
稚拙な、特撮とも呼べないような特撮も、どこか懐かしくて、むしろホッとする。
「見えてるよ、ピアノ線!」とか突っ込みながら観るもよし。
こういう映画こそ、たくさんの人に観てほしい。
まだの方は、ぜひ!
ユーラシア胎動――ロシア・中国・中央アジア (岩波新書)
奥付をみて『シベリア抑留』(2001)の著者と知り、現地の
情報通のものだなと思い、軽い気持で読み始めました。しか
し、書かれている内容の重大さに目を見張りました。
ロシア、中央アジア5カ国そして中国を中心とした地域での
最近の変貌が、それらの国が構成する上海協力機構という
地域協力組織、かつてのシルクロード地域で進む交通の整
備と物資の往来そして東への延びるパイプライン網などを話
題の軸としてレポートされています。
著者が言うように「アメリカを通じて世界を見るという惰性か
ら抜け出し、(中略)ユーラシアのダイナミズムに日本が本格
的にかかわることで、この国の時代閉塞の混迷を打破するき
っかけになる」(序章)かは、直ぐに結論が出るものとは思え
ないものの、一度は議論する値打ちのある提案だとは思いし
た。
基本的にはルポタージュなので、深い洞察には欠けるのか
もしれませんが、二百数ページの新書版としては十分な時事
情報と必要な考察が盛り込まれていたと思います。
地球のどこかの秘境から!? 不思議を求めて世界を旅する、泣き笑い4万キロ
お茶の間の人気番組「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとして活躍されている著者が世界のあっちこちを飛び回って、見て感じたところを楽しく紹介しています。
その中でも、ヒマラヤ登山は圧巻であり、番組撮影のために高地難所を人力で懸命に登りきっていく裏側を現地の人々と触れ合いながらレポートしたものです。
不思議発見を求めて、苛酷な自然環境であってもガッツを持って、前向きに世界中を飛び回っている様子がよく分かります。
それはそれで、とてもハードスケジュールでバイタリティーのある活躍ぶりですが、本書は、そういった旅に触れながら、著者の心の中を垣間見ることができます。
後半へと読み進むうちに、諸岡さんの秘めたる内側、「心の旅!ふしぎ発見!」というメンタルなものにテーマが移り変わっており、ほんとに不思議な本ですね。
日本代表激闘録 ワールドカップフランス大会アジア地区最終予選 1997 9/7~11/16 [DVD]
フランスワールドカップアジア予選を振り返るDVDです。一喜一憂した当時の記憶が鮮明に蘇りました。カズ、井原などの姿や若い中田などサッカーファンにはたまらない内容です。