舞姫(テレプシコーラ) 第2部 5 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
第2部は物足りなかったです。これで完結というのは読者にとっては消化不良な部分が多いのでは......。
これまでの流れからして名作の予感だったので、この終わり方だともったいなあというのが正直な気持ちです。
全体を通して主人公である六花はずっと傍観者で、第2部の終わりにようやくうじうじした部分がなくなっていって、これからコリオグラファーとしてどう成長していくのか、どんな困難にぶつかっていくのか、傍観者じゃない六花が一番見たい部分だったので、そこに行き着く前になんとなくで終わってしまってちょっとがっかりしました。
ただ連載も10年ということで、完結せずに続くよりはいいのかなとも思います。
個人的にこの巻で一番面白かったのは番外編でした。もちろん、続編希望です。
妖精王 [DVD]
北海道の森の中に妖精の国があり、ある病気がちな少年が『妖精王』として迎えられます。前の妖精王はどうなったのか?その少年が妖精王になることに反発する勢力とは?右も左もわからない妖精の世界で、少年が頼れるのは従者クーフーリンだが、彼は前妖精王の婚約者を寝取ったとの噂が。鹿の子供パックとともにダークエルフの女王、クイーン・マブの城のある摩周湖へ妖精王の証の水の指輪を取り戻すべく旅立つのだが。
独特な筆者の世界観がいまいち伝わりにくいのですが、原作を読んでからみればいいでしょう。
テレプシコーラ(舞姫) 第2部 (4) (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
漫画が軽く見られる要因の一つに、ストーリーが主人公の独壇場で当たり前の展開、
浮世離れした現実味の無い内容、エセファンタジーで欲求不満解消と
毒舌家に非難されても仕方の無いリアリズムの欠如が挙げられる。
そのリアリズムの追求が万人の共感を呼び、指導者ならば、当事者ならば、
両親きょうだい親戚友人、その他様々な人がどのような思いで、
その世界に関わっているかを見事に描ききっている今回。
「踊る」ために、そこに至るまでにどんなことが起こりうるか、
臨場感溢れる展開のバレエ漫画。
姉の過酷な短いバレエ人生を背景に、妹がどうやって成長していくのか、
手に汗握る展開・・・のはずが、ローザンヌを背景に引っ張る引っ張る。
しかし、この中に書き込まれた様々な状況が一つのコンクールに参加すること、
その手間と労力と刻み込まれた修練と努力が、一瞬のうちに脆く崩れたり、
何かのきっかけで助けられたり、落ち込んだりという、鮮やかな構成。
特に、最も得意とするコンテンポラリーに出演できなかったことが、
どのような結果になるのか・・・。いやはや、本当に見ものです。
若い時からこんな風に人生の修羅場をやり取りして積み重ねていく・・・。
その先に見えてくるものは何なのか?
漫画の世界とはいえ、この設定にため息・・・。
やはり、魅力的な作品です。
二日月 (山岸凉子スペシャルセレクション 8)
その昔、あすかコミックス他で出版された名作たちが次々と蘇ります!
十年程前に手放してしまったのを後悔していましたので、本当に嬉しい。
●二日月●粘着質な転校生に違和感を感じ始めた頃、彼女の異能力が話題になり…。
(1990) 『けれど 彼女のグループ内での立場は変化しました』
山岸先生が時代に先駆けてメンタルトレーニングを描いた作品。
悪意ある者の言葉に縛られる事こそ、本当の呪いなのかも知れません。
●ティンカー・ベル●美しい母と姉ふたり。顧みられない末っ子は妖精と友達になる。
(1973) 『あたしにはティンクがいるもの うるさい友だちなんかより数倍…』
級友の兄の登場シーン、サリンジャーのナイン・ストーリーズを思い出しました。
ティンカー・ベルの金粉って、ディズニーが最初なんですね。収録作最古作品。
●幸福の王子●盗みに入った家に置き去りにされていた子供、その純粋な魂はやがて…。
(1975) 『こいつの心臓がイカレちまったら 食事代ぐらいじゃすまないからだ』
O・ワイルドの「幸福の王子」を下敷きに、ツバメ代わりに奔走する羽目になる男。
彼は小心者の泥棒ながら、初恋の女性の忘れ形見の少年を見捨てられない。
●貴船の道●病で死にゆく女。その家庭に後妻として入った愛人は悪夢に苦しめられる。
(1993) 『醜い…わたし すべてを許せないわたしが 悲…しい… 苦し…い…』
夢に出てくる前妻はいつも後ろ姿。邦画「リング」も、顔を白紙で隠してる幽霊が怖かった。
不倫がバレてないと思うのは当人達だけですね。女性版『蜃気楼』のような作品。
●黒のヘレネー●身も心も美しいと讃えられる女の内実は、利己的な欲望の塊でしかなかった。
(1979) 『称賛されるのはあたりまえ ほんとお母さま いつもおかしなことをおっしゃる』
ブラッド・ピット主演で映画化されたトロイア戦争。その発端となった美女ヘレネーと
その姉クリュタイムネストラ。『蛭子』『星の素白き花束の』と違い自覚のない悪意を描く。
●朱雀門●独身のイラストレーターである叔母は、芥川龍之介「六の宮の姫君」をこう解釈した。
(1991) 『「生」を生きない者は 「死」をも死ねない… と彼は言いたいのよ』
主人公である少女と自由業の叔母という関係性から、一見『二口女』に似てると思いますが、
このテーマはむしろ『天人唐草』と同じ。自ら漕がない人生の船は、幸せの岸でなく滝壷へ…。
●愛天使●憎い父の家庭に乗り込んだ先妻の娘はそこで、世間から隔離された少年と出会う。
(1977) 『わたし 見たんです あの子の後ろに天使が立っているのを』
これも早々と自閉症児をテーマにした作品。山岸先生は「いま読み返すと忸怩たる思い」と
仰ってますが、先駆けて世間に認知を広めるという素晴らしい功績はあると思います。
●奈落●金髪の姉とブルネットの妹、どちらも母に瓜二つだが、賛美されるのはいつも姉…。
(1988) 『こうしてお二人並んでいると まるで色違いのお人形のようですね』
仏女優C・ドヌーヴとF・ドルレアックを想定して描かれた作品。ドヌーヴは実際に
「子供の頃、姉さんが死にますように、と願った」と漏らした…と読んだ記憶があります。
●天使カード●締切に追われる女性と、その飼猫ワビ。ある日天使が鬼の形相で襲ってくる!
(1996) 『ネコはもともと自分が主人だと思ってるわよ』
途中で「えっ何?ホラーなの!?」と思いましたが、山岸先生が見た夢だそうです。
私の愛猫も甘やかし過ぎて、自分を中心に世界が回ってると思っているようです…。